少子化対策、空き家対策などの施策で、国や地方公共団体などでは、いわゆる多世帯同居に関するリフォーム工事などに補助金を出すところが増えてきています。先日もブログで取り上げたテーマでは、福井市の事例で補助金の説明をいたしましたが、福井県内においては、郡部にいくと、かなり力を入れている自治体などもあるようです。
例えば、永平寺町では、「永平寺町住み続ける福井支援事業」と銘打ち、多世帯同居リフォームの補助金を最大60万円(1/2補助)と福井市の倍以上の補助金を出していたりします。
こうなると若世帯に子供が生まれるなどの状況で、保育園の送り迎えも含め、親世帯に頼るという生活スタイルを選択すると、「同居」するという方向性もでてきます。確かに、光熱費なども2世帯に分離するよりも1世帯のほうがそれなりに節約になりますし、食費も大人数で調理したほうがコスパもよくなるでしょう。何より同居することで親世帯が気分的に明るくなるということもあると思います。子育てで、いわゆるおじいちゃん、おばあちゃんが「孫守りする」というのは、田舎の昔からの生活スタイルなわけで、なんとなく、原点回帰がはじまりつつあるのかな?という感じもしてます。
まぁ、そこらへんは個々に事情があるわけなんで、一概には言えませんが、同居のタイミングで親世帯の家を子世帯が費用をかけて修繕、改造するというニーズはすごくあって、そういったご相談も数多くお請けしております。ですが、ちょっと注意点があるのです。それは、子世帯が親世帯の「資産」に対して、その資産価値を向上させるために使った費用は、子世帯から親世帯への「贈与」という行為にあたるということなのです。相続税ではありません。
贈与税の仕組み上は、年間での控除がありますが、それ超える分については贈与税の対象になるわけです。例えば、2階部分を全面改修して子世帯のスペースとして改造するなどの場合、面積や求める設備などにもよりますが、500~1000万という金額がかかることは当たり前にあります。その際、その支払いを子世帯が行う場合、控除した残りの分は贈与税の対象となるわけで、税率は贈与する額のレベルでも変わりますが、10~55%と幅広いレベルがございます。(明確な税額をここに書くと、ちょっと法律に抵触する恐れがありますのでやめときますw)
よく、いわれるのは、それは税務署の税務調査が入らないとわからないだろう?ということを言われますが、入らないという保証はありませんし、例えば、リフォーム工事の資金を住宅ローンなどで賄い、そのローンに対して「ローン控除」を受ける場合には、どのような工事を誰が発注し、どこで行ったか?という情報はすべて申請事由として税務申告するわけですが、そこから逆引きで、その建物は誰のモノなの?ということを調べられたら、「ん?贈与税の対象じゃね?」って感じになるわけですw
そうなることをしっかり見極めて、資金計画を立てる場合には、まず、建物だけは、100%子世帯の名義に変えることをお勧めしています。できればローン組まない場合でも、妙な詮索をされないために必要かと思います。そうすると、親世帯から子世帯への贈与が発生しますが、老朽化した住宅であれば、その資産価値が相当低いことが予想されますので、控除も含めれば低い税額で抑えることもできます。また、親世帯の資産を子が受け継ぐわけですので、相続時精算課税制度を利用することもできます。このあたりの税務相談は、最寄りの税務署か、もしくは、会計事務所へご相談されることをおすすめします。
また、名義変更にあたっては、様々な手続きが必要ですが、金融機関の抵当権設定などの権利関係以外は、時間はかかってもご自分方でもできる手続きです。ちょっとネットを検索すれば書類作成に必要な書類などもダウンロードできますので、こちらも最寄りの法務局の相談窓口で、手続き方法を押してくださいと相談すると、かなり丁寧に教えてもらえます。ただし、抵当権設定などの第三者の権利を付ける場合には、司法書士などに依頼することを強くお勧めします(というか、たぶん金融機関側が嫌がると思います)。