なぜ建設業許可を取らないのか?

最近、巷で、「悪徳リフォーム事件」ということで、いわゆる「点検商法」で荒稼ぎをしていたとして、容疑者が逮捕されました、詳しくはネットでググるといくらでもヒットしてきますので、旬な話題かもしれません。逮捕の突破口となったのは、

「建設業法違反」

なのですが、ざっくり言えば、「無許可で建設業を営み」、「業法上制限のある500万円以上の建設工事を請負い」、「工事代金を受け取っていた」というところです。建設業許可さえとれば、このような業法上の制限などありませんし、営業はできるわけですが、なぜ建設業許可を取らないか?って不思議じゃないですか?w

実は、そこには意外と高いハードルが待ち構えているってことをご紹介します。

まず、建設業許可には2種類あります。一つは「一般建設業許可」というもの。もう一つは「特定建設業許可」というものです。なんで2つあるか?というと、これは建設業として営むことができる工事のレベルを指します。話しを「建築工事」に限定しますと、

一般建設業許可は、請負金額が「500万円以上」なのですが、特定建設業許可の場合は、元請工事業者として500万円以上の工事を請負い、かつ、その際の下請けに発注する工事額が6,000万以上になる場合にひつような許可となります(建築ではない場合は、4,000万以上です)。

次にその許可に対して、なんの工事を行うことを業として認めるか?という部分で、

1.土木一式工事
2.建築一式工事

という一式工事の枠組みが2つあります。私どものような建設業者で建築工事全体を行う場合には、「建築一式工事」となります。そして、そのほか、

3.大工工事
4.左官工事
5.とび・土工・コンクリート工事
6.石工事
7.屋根工事
8.電気工事
9.管工事
10.タイル・れんが・ブロック工事
11.鋼構造物工事
12.鉄筋工事
13.ほ装工事
14.しゅんせつ工事
15.板金工事
16.ガラス工事
17.塗装工事
18.防水工事
19.内装仕上工事
20.機械器具設置工事
21.熱絶縁工事
22.電気通信工事
23.造園工事
24.さく井工事
25.建具工事
26.水道施設工事
27.消防施設工事
28.清掃施設工事
29.解体工事

と専門工として27の業種が指定されています。建築に絞って話しをすれば、2.建築一式工事での許可をとっておけば、29番までの工事を請け負っても「元請」としても「直営」として問題はありませんし、大きな工事でも下請業者に発注する工事額の合計が6,000万を超えなければ問題ないです(建築の場合です)。

では本題として「なぜ建設業許可を取らないのか?」なんですが、ハードルとは

「許可要件」

にあります。一応、国土交通省の建設業許可要件のホームページのリンクをご紹介しておきますw また、一般建設業許可と特定建設業許可では、特定建設業許可の方がすさまじくハードルが高いので、以下の説明は一般に限定します(一般とれない会社は逆立ちしても特定なんかとれませんのでw)。


◎経営業務の管理責任者等の設置(建設業法施行規則第7条第1号)

経営業務の管理責任者って、すごい難しい表現ですが、普通は社長と言われる立場の人になりますが、法人であれ個人事業主であれ、以下の要件を求められます。

1.建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること。
2.建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者であること。
3.建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者であること。
4-1.建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
に加えて、常勤役員等を直接に補佐する者として、当該建設業者又は建設業を営む者において「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」について、5年以上の経験を有する者をそれぞれ置く(一人が複数の経験を兼ねることが可能)ものであること
4-2.五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者
に加えて、常勤役員等を直接に補佐する者として、当該建設業者又は建設業を営む者において「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」について、5年以上の経験を有する者をそれぞれ置く(一人が複数の経験を兼ねることが可能)ものであること

要するに許可をとろうと思う人が、「建設業に関しての経営経験がある」ってことが必要なわけで、たぶん、どこかの会社に勤めていて、独立するとなると3番の要件ということになるかと思われます。法人などで2代目以降の方であれば、4-1と4-2ということになるかと思いますが、いずれにしても5~6年、業界に籍を置いて営業なり、現場作業などを行って、かつ、お金の管理もしたという実績が必要なわけです。

実は、この1番最初にくる要件がもっとも大事なところで、建設業の業務は契約者から大きな金額のやり取りをするわけで、経営的な問題を抱えている場合には、工事の継続ができない可能性もあり、結果として工事途中で続行不能になるケースも出てくることから、この「経営的要件」はかなり重いのです。従って「儲かる!」というだけで、建設関連の会社を立ち上げることはできないってわけです。これが第1のハードルです。


◎適正な社会保険への加入(建設業法施行規則第7条第2号)

健康保険、厚生年金保険・・・適用事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていること
雇用保険・・・適用事業の事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていること

これ、相当に大きいです。社会保険加入が建設業許可の要件です。元々はなくても建設業許可を出していたのですが、建設業法とは関係なく、雇用者(アルバイトも含め)がいる場合には必ず「社会保険加入」が義務ですが、加入率は依然低迷で、結果としてちゃんとしているところとしていないところとで不公平感が出ています。雇用主は社保加入のために社会保険費を半分支払うわけですので、経営をする上では資金繰りで結構負担になるわけです。なので、社保逃れをするというケースが後を絶ちません。よって建設業許可要件に、この社会保険加入を条件として強化しています。


◎営業所技術者等の設置(建設業法第7条第2号に規定する営業所技術者及び、同法第15条第2号に規定する特定営業所技術者)

[1]-1指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、高校卒業後5年以上若しくは大学卒業後3年以上の実務経験を有し、かつ、それぞれ在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者
[1]-2指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後5年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者
・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後3年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者のうち、専門士又は高度専門士を称するもの
[2]許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、10年以上実務の経験を有する者
[3]-1国家資格者
[3]-2複数業種に係る実務経験を有する者

建設業許可の項目として許可受ける業態に対して、「専任技術者」が必要になります。大工さんが大工工事として許可を受ける場合でも同じです。その際に、[1]ー1から[3]-2に関する資格やキャリアがなければ技術者として認定されません。国家資格でいいので、2級建築士や2級施工管理技士に合格していても問題ありません。この資格をもたれていれば、実務経験に関わらず「専任技術者」になれますので業法上の要件は満たされます。もちろん、実務経験でも所定学科卒業なら高校で5年、大学で3年の建設工事に関する実務経験があればいいです。指定学科でなくても10年です。ですので、この業界でまっとうに働いてきた方でそれなりに経験年数があれば、この許可要件はクリアできます。


◎財産的基礎等(法第7条第4号、同法第15条第3号)※一般に限定して説明します。

次のいずれかに該当すること。
・自己資本が500万円以上であること
・500万円以上の資金調達能力を有すること
・許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること

これも結構ハードル高いです。特に2番目の資金調達能力という部分では会社や個人の信用を金銭的なレベルではかるものです。500万以上の工事からが許可ですので、当然、500万の工事を請け負えるだけの資金力をみられます。


◎欠格要件(建設業法第8条、同法第17条(準用))

*国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次の[1]から[14]のいずれか(許可の更新を受けようとする者にあっては、[1]又は[7]から[14]までのいずれか)に該当するとき、又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならないと建設業法で規定されています。

[1]破産者で復権を得ないもの
[2]第29条第1項第7号又は第8号に該当することにより一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
[3]第29条第1項第7号又は第8号に該当するとして一般建設業の許可又は特定建設業の許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があった日から当該処分があった日又は処分をしないことの決定があった日までの間に第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出をした者で当該届出の日から5年を経過しないもの
[4]前号に規定する期間内に第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出があった場合において、前号の通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員等若しくは政令で定める使用人であった者又は当該届出に係る個人の政令で定める使用人であった者で、当該届出の日から5年を経過しないもの
[5]第28条第3項又は第5項の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
[6]許可を受けようとする建設業について第29条の4の規定により営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
[7]禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
[8]この法律、建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるもの若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定(同法第32条の3第7項及び第32条の11第1項の規定を除く。)に違反したことにより、又は刑法第204条、第206条、第208条、第208条の3、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
[9]暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者([14]において「暴力団員等」という。)
[10]精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
[11]営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は次号(法人でその役員等のうちに[1]から[4]まで又は[6]から[10]までのいずれかに該当する者のあるものにかかる部分に限る)のいずれかに該当するもの
[12]法人でその役員等又は政令で定める使用人のうちに、[1]から[4]まで又は[6]から[10]までのいずれかに該当する者([2]に該当する者についてはその者が第29条第1項の規定により許可を取り消される以前から、[3]又は[4]に該当する者についてはその者が第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、[6]に該当する者についてはその者が第29条の4の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該法人の役員等又は政令で定める使用人であった者を除く。)のあるもの
[13]個人で政令で定める使用人のうちに、[1]から[4]まで又は[6]から[10]までのいずれかに該当する者([2]に該当する者についてはその者が第29条第1項の規定により許可を取り消される以前から、[3]又は[4]に該当する者についてはその者が第12条第5号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、[6]に該当する者についてはその者が第29条の4の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該個人の政令で定める使用人であった者を除く。)のあるもの
[14]暴力団員等がその事業活動を支配する者

いろんな事情があるかもしれませんが、その方が事業を遂行する上で重要な立場にある場合には、一定の条件で規制を受けています。例えば、何かの罪を犯して刑務所に入った人が人生をやり直す意味で建設業許可を取りに行く場合、少なくとも5年経過しないと許可要件にひっかかるというわけです。

そんなの法律や手続き上の問題だと思うかもしれませんが、「許可を出す」というのは「許可を取り消す」というのと同じレベルでの権限を行使されるということですので、結局、「身の覚えがある」人は建設業許可を受けることはできないということになります。別の言い方をすれば、許可を「取らない」のではなく、「取れない」というわけです。

ちなみに、建設業許可を受けますと、法人であれ個人事業主であれ、年度終了後3か月以内に業務報告が義務付けられます。これには工事経歴書や決算書などの財務諸表もつけねばなりません。出さないと許可を取り消されますし、許可更新を受け付けられない場合もあります。

「悪徳リフォーム業者」という括りは非常に曖昧ですが、工事を依頼される方は、その工事額に応じて、まずは依頼する業者が建設業許可があるか?を確認してほしいところです。また、工事を分けて契約し、500万以下にしても、契約日が同じや近日であったり、工事場所が同一であれば、同一工事として扱われますので、そんな細工をしても無駄です。

建設業許可は国土交通省のホームページから確認できます。会社名で「株式会社」とか「有限会社」などを省いて検索してください(自分で検索して福登建設株式会社と入力して出てこなかったのでめちゃめちゃあせりましたwww)。

ちなみに、社保加入については福井県が登録させていないようです。弊社は社保加入会社ですw

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