耐震改修を行うと必ずと言っていいほど「はぁ?」っていう施工跡に遭遇します。今日は、筋交いがもはや筋交いとして十分な効果が見込めないような筋交いを見つけました。
なぜか、わざわざ筋交いを平たい方を上下に向けて取り付けてます。筋交いは、建物に横からの力がかかったときに、梁(横架材)と柱を下図に示すような変形を抑える効果があります。
ただし、力がどんどんかかっていくと筋交い自体が曲がってきて、対抗できなくなると折れます。これを座屈といいますが、写真画像に戻れば、長方形を立てるか寝かせた状態か、どちらにするとより強くなるかは感覚的におわかりになると思いますが、長方形を立てた状態のほうが、上の画像のような変形に対しては曲がりにくいことは想像できると思います。従って、一般的には以下の画像のように、平たい長方形の筋交いを立てて使うことになります。専門的には、弱軸と強軸というものなのですが、力がかかってくる方向と、材料の変形で強くしなければならない方を強軸にむけて使うわけです。
ところが、問題の筋交いの箇所をよーーーーーーーーく見ますと、筋交いを抑えるような材料を横方向に入れているのが見えます。赤の丸で囲った部分ですが、つっかえ棒のようなものを入れてます。
これを物理的にいいますと「変形に対する拘束」といいますが、筋交いが膨らんで壊れるのを防ぐために、つっかえ棒をいれて拘束して補強しているのかな?と見ることはできますが、正直、なんでこんな面倒なことをしてるんだろうっていう感じです。確かに長方形の平たい部分は弱軸といって弱いわけで、筋交いを部材を縦につかっていれても、グッとおされてくると弱いほうに膨らんでこわれるのでは?という考えもあります。これを面外変形と専門的にはいいますが、普通に筋交いを入れるときは、以下の画像のように、
筋交いを間柱で留めていき、面外に変形するのを防いだりします。ですが、問題の壁には間柱は存在していません。つまり、間柱を立てる代わりに、筋交いを横につかって、拘束するためのつっかえ棒を打つことで壁の面材をとめることができるというやり方をとったのかな?という想像ができます(拘束は片側のほうだけですが)。確かに、構造的な解析をおこなったときに、この箇所だけ、力のかかり方がちがって、筋交いが外に膨れることの恐れのほうが大きいという場合には、問題の画像のような使い方はアリかもしれません。それを感覚的に察知し、このような問題の画像のような措置を現場でとったということであれば、それはそれで評価できる話しではあります。
今となっては大工さんの意図がわかりかねる事例です。筋交いが外して入れ替えることにしています。