実は、ちょっとした勘違いをなさっている方がおられます。それは、建築中あるいは建築前の建物の情報は、個人が特定される情報だということで「公開されない」とお考えの方です。建物を建築する場合には「確認申請」という設計内容に対する法適合審査を第三者が行うという制度がありますが、この申請書類には当然、建築しようとなさっている方の住所、氏名、電話番号、現住所の記載があり、この方を「建築主」という法律的な位置づけにしています。
もちろん、これは設計上の手続きにすぎませんが、同時に、「建築工事届」というものも出しますので、そちらにも同様な建築主の記載があります。なぜそういう個人情報の記載まで求めるか?といいますと、建築行為は、社会的な影響を与える「可能性」があるため、その行為自体の最終責任者としてどなたが執り行うのか?ということを周知する必要があるというわけです(建築主の法的な立ち位置はまた別の機会にご説明しますが、実は思ってるほど単純なものではないことだけは申し上げておきます)。
ですので、住宅を新築しているということを他人に知られたくない!と考えても、建築場所がわかればそこから建築的な情報の概要はすべて知られるということを知っておかなければなりません。ちなみに、もっとも簡単に情報を知る手がかりとなるのが、この確認申請で提出する書類の中の「建築計画概要書」というものです。この書類は、建築主事がいる役所などで「閲覧」を求めれば、簡単に中身を見ることができるのです。そして、そこに記載されている「個人情報」に対して黒塗りするような措置はほとんどの自治体で行われておりません。そして、その記録は各自治体で保管期限を設けていますが、福井市においてはマイクロフィルムに記録するなどの措置をとっており、近年、それらを画像データ化しているので、かなり古いものも保管されています。ちなみに、以下の画像はその実例になります。
昭和57年6月に提出されたものです。ブログでなにもかも公開するわけにはいきませんので白抜きしてありますが、原本には、お客様のお名前、住所、電話番号はもちろん、設計者、施工者の情報も記載があります。裏面もありまして、そこには、付近見取り図と配置図が記載されています。
あくまでも概要でしかありませんが、ここでわかることは、
・確認申請が提出された物件であること。
・設計上の床面積等の情報。
・建物の配置。
・建物の構造や階数
・設計者
・施工者
なのです。よく工事看板として「○○邸住宅新築工事」の○○の部分に自分の苗字が書かれることを嫌って、施工会社に○○の部分を記載しないで!というお願いをされる方がいますが、ぶっちゃけ、無駄なんですw 概要書は閲覧されますし、なにより現場には「建築確認済板」の掲示が「義務」ですので。
さて、この概要書ですが、重要なことは、
「この書類が存在している=確認申請は提出された」
ということです。つまり、少なくとも法的には設計上の問題は「ない」ということなのです。ですが、本来、これに対になるものがあるのですが、それが「完成検査済証」というもので、これを受けていない建物が一般住宅の場合、かなりの数に上っているということが、今、空き家問題なども含め大きな問題になっています(これも別の機会にテーマにしたいと思います。)。
この建築計画概要書を閲覧することは誰でもできると申し上げましたが、一応、窓口で目的を聞かれるようにはなりました。聞かれるだけですので適当な答えで通っちゃうわけですので、当然、営業活動の一環として、今、建築しようとしている人の名前と住所と電話番号を「メモ」って帰ることはできるわけですw 実は、個人情報保護法が制定される前は、写真をとってかえったり、かなり露骨な手段で閲覧して帰ってたわけですが、それって、ほとんどが営業目的だったりしますw
ですので、住宅を建築しているとカーテンや外溝などの、いわゆるオプションになりがちな工事に関してのDMが送られてきたりします。これは、この概要書を閲覧しているからです。