もうすぐ始まる建築基準法大改正施行 その2

前回のブログで最後に「この時期にテーマとしてあげるのには、実は理由があります。」と書きました。

その理由をご説明いたします。まず、前回も出しました国交省のチラシに記載があったことをもう一度みてみましょう。

このチラシをみて何かお気づきになりませんか?3つのルールという極々単純な書き方をしていますが、おおざっぱにいって、ルールが見直され、建築確認などの手続き上、「見られる図面」、「見られる資料」、「見られる内容」が増えるというわけです。これだけみるとなんだか、「基準のハードルがあげられたの?」って思うかもしれませんが、そうでもないのです。

今日は、まず「1つめ 全ての新築で省エネ基準適合を義務化」についてお話しましょう。

省エネ基準っていうのは、これまで幾度となく基準が見直され、また評価方法などが改良されてきたりしています。別に、今回の法律改正でいきなり決まったという内容ではありません。省エネ基準に適合している建物を設計するというのは、原則として国が定めた基準に対してどの程度クリアできているか?でしかなく、その程度によって省エネ性能をランク付けしているわけですが、これは今までも必要に応じて設計で計算したり、仕様的に準拠することでクリアしていました。例えば「長期優良住宅」「ZEH」などの、いわゆるワンランク上の省エネ性を担保した住宅を求める場合には、当たり前に設計し、当たり前に計算され、当たり前に審査を受けていたような内容です。

これに対して、これまで対応してこなかった、あるいは、そういった「省エネ性能を検討する」ことがなかったような設計者は、この改正によって「設計することを強いられる」わけです。「どうやって計算するのか?」、「どうやって断熱性能の評価するのか?」また、「どうやって施工するのか?」を知らない設計士は、今回の改正で義務化された省エネ基準適合に関する審査を「どうやって受けるのか?」を知りません。知らないので設計できないってわけです。

その具体的な手続きとして、

 「①省エネ適判手続きが必要になります。」

と書かれています。実は、これも今までにもあった制度で、正式には「建築物エネルギー消費性能適合性判定」といいます。これまでの制度では、300㎡以上の「非住宅」において、適判に合格することが求められていました。それ以外は、適合審査は義務ではなく、せいぜい努力義務であり、事実上、やらないということになります。

さて「適判」ですので、法律的な重みが違います。その設計において省エネ性能が法律的規制をクリアしていない場合、確認申請を通すことはできません。要するに、確認済証が発行されることがありません。法が求める規制を受ける建築物を設計するにあたって、基準を満たしていないものを法律をしっかり守っているという判断を出すことはありません。建築確認が終わらないわけですから、少なくとも、都市計画区域内での建築は、いくら工事届を出したとしても受理されるわけはありませんし、そのまま工事をやるとなれば「違反建築物」として行政処分されます。ちなみに、この行政処分は担当した建築士はもちろん、設計事務所、また施工を請け負っている工務店、建設会社まで及びます。さらに、住宅でも非住宅でもその建築を依頼した「建築主」すなわち、お客様が処分の対象になります。

でも、省エネ性能を評価する手法を知らない設計士に、救済措置があるのです。それが、

 「②仕様基準で評価する場合は省エネ適判は不要です。」

というものです。計算がわからない、そもそも評価方法に理解がない、あるいは、「メンドクサイ」と思う設計士に対して、国交省は救済措置として、地域ごとに定めららた断熱材に対する性能区分を満たしていることが確認できれば、省エネ適判を受けなくてよいとしているわけです。

となると、できない設計士は、おそらく仕様規定を選択するでしょう。本来は、壁や天井、床、また、窓などの開口部の性能数値を元に、しっかりと計算し、エネルギー消費量を算出した「設計一次エネルギー消費量」が、国が定めた「基準一次エネルギー消費量」よりも少ないことを求めればよいだけのことなのですが(BEI≦1.0)、計算方法や評価方法を知らなければできませんし、個々の材料の特性値を知らなければ計算の土俵にものれません。

では、この計算がすごく難しいのか?というと・・・・・

使う建築材料の個々の物性数値と、厚さや幅などの諸元があれば、あとは四則演算での計算になりますので、それほど難しいものではありません。また、様々な計算ツールや評価ツールを、国の外郭団体ではありますが公開しており、事実上、それらのツールを使って適判を受けることになりますので、「できないことのほうがおかしい」のです。

そして、結論付けたことを言いますが、こういうことができない建築屋さんは、おそらくこういった言い方をしてきます。

 「来年、法改正があるので今年建てないと建築費が高くなりますよ?」

この文言を言われたら、その建築屋さん、あるいは、設計士に、能力がない、技量がないと思った方がよいわけです。

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