前回のブログからの続きです♪
前回のブログでは3つの改正ルールについての「1つめ 全ての新築で省エネ基準適合を義務化」についてお話ししました。今回は、「2つめ 木造戸建住宅の建築確認手続き等の見直し」についてお話しします。
国交省からのチラシでは以下のように書かれています。
こちらの画像をご覧ください。
ここに、「構造等の安全性審査」という書き方がされていますが、まず都市計画区域内・外の区別があって、事実上、これまでは都市計画区域外であれば「一般的な木造住宅(2階建)」であれば、「建築確認」は必要ではありませんでした。言い換えれば、田舎の山奥では住宅を建てるための法的な審査手続きというのは事実上、なかったわけです。ところが今回の改正では、その基準がかなり引き下げられ、一般的な木造住宅(2階建)でも建築確認が必要になりました。田舎だから勝手に家を建ててもいいとか、そういうなのはほぼ無くなったわけです。
さらに、よく見ると「構造等の安全性審査」という項目があります。改正ではこれが「構造等の安全性・省エネ審査」となっています。そして、その規制基準が「階数2以上又は延べ面積200㎡超」と、かなり引き下げられています。つまり、「一般的な木造住宅(2階建)」も審査対象になるということ、そしてさらに、省エネ審査も行うという、2段構えで審査項目が増えるというわけです。では、実際、改正前、つまり現時点の審査項目ってどんな内容なのでしょうか?以下の画像をご覧ください。
一般的な木造住宅(2階建)は、現行法では「4号建築物」というものに属します。そして、特段、防火地域等の規制を受けていないところでの住宅では、画像左側が示すように、「構造関係規定」及び「防火避難規定」という部分に×がついています。つまり、この部分は審査しないわけです。では何を審査しているの?といいますと、敷地関係規定と一部単体規定と集団規定だけで、例えば建ぺい率とか容積率、敷地に対する建物配置、排水経路の計画、採光、換気などの開口部規定の審査でしかなく、これらはいわゆる「間取りに対する審査」と「外観の審査」でしかありません。また、画像右側では、防火地域などの規制箇所においての審査項目ですが、そこでも「構造関係規定」が×となっており「審査しない」わけです。
簡単にいうと、一般的な木造住宅(2階建)の場合、間取りと外観の設計さえできれば、そのレベルの法的な審査でしかなく、「構造」などの規定などについては無審査であるというわけです。
これには理由があって、法の立て付けは、住宅などの個人資産の建物で、かなり小規模な部類であれば、
「一々規制に照らして審査しないから、建築士さんが責任をもって設計してくださいね?」
ということで、審査側の業務量を減らしているわけです。建物には重要度というものがあって、社会的な影響が強い建物、防災上重要な建物などは厳密に審査するけど、小規模な一般的な木造住宅(2階)については設計士がちゃんと設計しているという性善説の元に審査を省略しているわけです。
ところが!
お客様はそういったことを知らないのをいいことに、この「構造関係規定」という部分について「審査省略」を「設計省略」と履き違え、構造的な設計をやってこなかった設計士が世の中には相当数いるわけです。言い換えれば、「間取りは描けるが構造はわからない」という、謎の設計士が多いということです。今回の法改正がなぜこのような部分で行われているか?というと、こうした知識不足、経験不足の設計士が設計した「一般戸建住宅」が相当数流通しており、「構造的な性能レベル」がちゃんと設計がなされていないことで、例えば地震に対する備えや、太陽光パネルなどが屋根に乗った場合の重さに耐えられるかどうか?など、国が進めようとしている「地震防災」や「省エネ住宅」施策に多大な影響が出てくると判断したからです。
さて、では、今、皆さんが住んでいる住宅が、この「構造関係規定」をしっかり検討されているかどうか?というものが気になるところだと思いますが、それを知るには、ご所有の住宅を建てるときに業者からもらった図面の中に、次のようなものがあるか?でわかります。あくまでも一例です。
これは「構造伏図」というものです。実際に、どのように柱や梁をかけることを行うのか?また筋交いなどの耐力壁といわれるものをどこに配置するのか?といった図面です。この図面がなければ、実際に住宅を建てることはできません。
お客様は住宅の設計を設計士に依頼しているわけです。そうすると、間取りの設計や外観の設計、あるいはデザインなどが気になるでしょう?それらに対して、利便性が高く、機能的な間取りや、素晴らしい外観デザインを見せてもらえ、それが気に入って契約などもなされると思います。
でも、ちょっと待ってください。それをどうやって作るのか?これに対する説明はありましたか?細かいことはわからないとしても作るための図面が建築主である皆さんの手元にありますか?ないとすると、どうやってつくったのでしょうか?また、請負金額の見積などを見せてもらって、その金額で契約なされたと思いますが、どのような材料をどこに使うのか?そういった情報がないのに、なぜ工事の金額が決まるのでしょうか?
疑問に思いませんか?
結論をいいますが、そういった業者は、請負契約を貰うことに懸命になるだけで、建物をどうやって設計し、建築するのか?という部分については、「あとから考える」というわけなのです。皆さん方お客様が、契約をしてくれてから、どうやって建てるかを、柱や梁をどうやって架けるのか、基礎をどうやってつくるのか?そういったことを「後付け」で設計するわけです。なので、契約したときに、その手の図面がないのです。そして、その根底には「どうせ素人なんでそんな図面出したってわからないだろう」というものもありますし、もっとも言えば「法的に審査されないから図面かかなくてもいい」という屁理屈なわけです。
そして、そうした「異常な」状態が「普通」になっていることから、建築を志した若い世代の設計者も、単に間取りやデザインができれば「設計士」として仕事ができると考えてしまい、結果として構造を全く理解できていない設計士となり、到底建てることができないような住宅を平気でお客様に提案してしまうというわけです。
さて、今、平屋ブームですけど、このブームは住み方としての平屋ニーズというより、ここまでお話しした法的な規制の改正が影響していると言っても過言ではないかもしれません。今回の改正では、面積的な規制はハードルは下がるものの、一般的な広さの住宅であれば、これまでどおり「審査省略」を受けることができます。言い換えれば、今まで同様、それほど構造的な設計ノウハウがなくても仕事が続けられる、唯一の方法は「平屋住宅」にあるというわけです。すべての平屋住宅がそうだとは言いませんが、そのときには提示される図面をしっかり確認してください。構造的な設計図面がなければ、構造的な設計ノウハウはないと判断して差し支えありません。