イマドキの新築住宅は安全なのか?その2

その1に続きます。

その1では、震災被害を経験し、建築基準法が都度改正されてきた経緯、最終的に抜本的な改正は、今から24年前、2000年の基準であることや、その後の東北、熊本の震災では抜本的改正されていないこととをお話ししました。少し焦点を絞って「2階建てレベルの木造住宅」という部分で、建築基準法でどのように扱われているか?ということを説明したいと思います。以下の図をご覧ください。

株式会社M’s構造設計 代表取締役 佐藤実先生作成。構造塾資料。

「耐震性を評価する」というのは「構造安全性を評価する」ということになります。建築基準法で定められている手法としては、ざっくり2つあります。一つは、図中①の「仕様規定の計算」というものです。そしてもう一つは、③「構造計算」というものです(※②は法律の定めの説明上、一旦、割愛します)。そして、この③「構造計算」は法律上、規模によって「審査の過程」で求められたり求められなかったりします。2024年1月現在の法律では、木造住宅レベルでは「木造3階建て以上あるいは、延床面積500㎡以上」です。おおよそ一般的な住宅においては「審査に必要な設計図書」ではありません。

では、どのような審査で「構造安全性の評価」をするのでしょうか? それは①で示される「仕様規定の計算」といわれるものです。ここで求められる計算とは以下の通りです(2024年1月現在)。

・筋交いなどの耐力壁の量(壁量計算)
・筋交いなどの耐力壁の配置バランス(四分割法)
・柱の頭、脚の部分に取り付く金物の検定(金物検定)

3つだけです。他にも細かい規定はありますが、それらは計算を必要とせず、○○以上とか○○以下とかいう規制だけです。問題なのは、この仕様規定の計算は、一部、各都道府県市町村レベルでの条例などの取り決めがあるところを除き、事実上、全国どこでも違いがないということです。その地域で、雪が降ろうが、風が吹こうが、地盤が軟弱であろうが、条例などで割増しを求められない限り、「法律的に考慮する必要がない」わけです。

この「仕様規定」が目指しているところは、以前にもブログテーマにしましたとおり、

・中程度の地震(震度5強以下、200gal程度の地震)では「無損傷」である耐震性能
・大規模な地震(震度6以上、400gal程度の地震)では「損傷しても修復により使用可能」となる耐震性能

を目指しています。これだけ見ると、震度6以上でも大丈夫なんだ!と思うかもしれませんが、そもそも、建物が傾いてやっと建っている状態だとしても、それは倒壊には当たらず、ある意味「修復により使用可能」というレベルです。また、その地震頻度が法律的な想定としてはどうかというと、

・中程度の地震では「稀に(数十年に一度程度)発生する地震による力」
・大規模の地震では極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力

でしかありません。それでは今回の能登の震災を振り返った場合、「中程度の地震」という震度5強レベルが余震として数十年に一度程度の頻度レベルで発生しましたでしょうか? そんなことはないはずです。

南海トラフなど超大規模地震が予測されていますが、残念ながら超巨大地震、震度7や8などが襲ってきた場合、今の耐震性能をもってしても、おそらく無損傷ではいられないでしょう。ですが、そんな大規模地震が発生した場合、震源から遠いところでも震度6や5強になることは明らかです。また、それらが、たった1回だけ発生するわけではなく、余震として何回も繰り返し発生してきます。現実的な震災が大震災として発生してしまった場合、耐震性能を吟味していない建物は本震ではなんとかなったとしても、余震で倒壊していくことは十分に予測できることなのです。

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