中古住宅の耐震等級

中古住宅を探しておられる方で、昨今の地震の影響もあって「耐震性」を重視し「耐震等級2」や「耐震等級3」の中古住宅を探しておられる方が多くなってきています。「等級」というのは、住宅に関する「性能表示制度」として、平成12年4月1日に施行された住宅品質確保法(住宅の品質確保の促進等に関する法律、別名:品確法)として、新築住宅に対しての性能を評価するものとして定められたものですが、平成14年12月より中古住宅、いわゆる「既存住宅」に対しても同様な性能評価を行うことができるように制度を変更した経緯があります。

そして、耐震等級は、この住宅性能表示の性能の一つです。等級をしっかりと認定されている建物には「性能評価書」というものが発行されます。

能登地震以降、中古住宅の市場においても、その物件の耐震性を吟味されることは極当たり前の流れだとは思いますが、では、実際の中古住宅の市場において「耐震等級2」や「耐震等級3」の物件が流通しているのでしょうか?まず、結論を申し上げますと、

「ゼロではないが、ほぼない」

と言えます。理由を説明します。

①評価書の発行を受けている建物が中古住宅市場では希少

まず、そもそも新築時に住宅性能表示制度にのっとり評価書を受けている建物自体が少ない上に、それが中古住宅市場に流れることはごく稀です。そもそも性能を重視した家づくりを行う方が、その思い入れの強い住宅を手放すといったことは頻繁にはありません。よほどの事情があって手放すわけですから、一般流通としてではなく、不動産仲介業者が元々そういったニーズを聞いていた方向けに仲介を行い、売買に至るケースが多いと思います。

②評価書がない既存住宅に対する評価認定は手続きのハードルが高い

現状の住宅に対して評価認定を行うには、現状の住宅について「きっちりとした調査」が必要です。その調査内容は「目視」という見た目の調査もあれば、そうでないものもあります。例えば、基礎が鉄筋コンクリート造になっているか?を調べる場合には、鉄筋が入っていることをX線等で確認しなければなりませんし、その鉄筋径やピッチなどもおおよそでもわかる必要があります。

また、「耐震等級」では、構造の安定性を評価するわけですので、その住宅が構成している柱や梁などの配置状況、大きさなども調査しなければなりません。もちろん、調査には費用もかかりますし、もっと大きな問題として「等級を謳う場合には、評価に見合う状況に改修しなければならない」ということです。中古住宅は、新築住宅と比較して、価格メリットがない限り売れません。

売主側はできるだけ早く売りたいという思惑がほとんどですし、現状の住宅に自腹で経費をかけてまで売ろうとする例は、中古をリノベーションして販売している会社くらいですので、まず、「現状有姿」での取引を条件としてきます。どうしても耐震等級を3などにしたいのであれば、購入後に買主側で費用をかけてやるというスタイルでしかありませんが、どのくらいの対応工事が必要なのか?は確実な評価のための調査をしない限りわかりませんし、調査及び評価認定のための費用は必要になります。


これらの理由により、中古住宅で耐震等級3や2の評価書がついている、あるいは、つけることが可能なのか?ということに対しては、不可能ではありませんが、かなりのコストがかかり、それが新築住宅を取得する場合と比較すると、かなりのコスト負担が必要になる可能性もあるということです。

ですが、例えば、その中古住宅の立地に惚れ、その建物形状や間取りや外観デザインなど、どうしてもその建物でなければならないという思いが強ければ、評価を受けるためのコストなどは問題にならないのかもしれません。耐震等級ありきではなく、その建物と立地を買いたい!と考えることを中心に考え、後顧の憂いなきように備えをするという発想でなければ、耐震等級の認定を受けた建物を取得するのはかなりハードルが高い(ほぼ無理)と言えます。

さて、こうなると、そういった要望に漬け込むような商法を取るところがでてきます。それが

「耐震等級3相当」、「耐震等級2相当」

といった言葉です。中古住宅の物件にこの文言が付いている場合、ほぼ100%の確率で評価書、つまり認定は受けていません。逆に言えば、受けられないから「相当」という文言がつくのです。そして、その多くは、「室内リノベーション工事の際に対応工事を行いました」という説明があると思います。ですが、その対応工事というのは、単に「筋交い」などの耐力壁を増やしただけで、実際に、地震時に想定する水平力を割り増した上で設計されているわけではありません。これについては、以前のブログをご参照ください。

中古住宅も、新築住宅同様に、耐震等級をはじめとする「性能についての評価(住宅性能表示)」を受けることが可能です。ですが、それが買主側が考えているコストに見合うかどうか?は甚だ疑問です。

そして、結論として申し上げたいことは、

「性能はコストに比例する」

ということです。住宅取得のコストを考え「中古住宅の購入」を考えるのであれば、ほしい性能が確かな評価を受けていることが必須ですし、その評価を受けることに対しては、それなりのコストがかかるということを理解しなければなりません。

タイトルとURLをコピーしました