半分壊して増築する物件#7

前回の#6に続きます♪

鉄筋も編み上がり、配筋検査後、いよいよ耐圧版からコンクリートを打設していきます。

イマドキですと、余程の理由がない限り、一輪車でコンクリートを運んで打設するというようなことはなく、ポンプ車をつかって「圧送」という作業でコンクリートを打設していきます。

さて、前回のブログで「指定建築材料」としての「鉄筋」の品質管理のお話しをしましたが、今回の「コンクリート」も基礎部分に使用する場合には、法が規定する「指定建築材料」となっております。つまり、品質管理の結果が検査時に精査されるというわけです。

コンクリートはコンクリート製造会社に対して、設計で指定した強度+αで製造を依頼し作ってもらうわけですが、この+αというのが実は重要です。基準になるのは設計での強度です。これを「設計基準強度(Fc)」といいます。令和7年の4月からの法改正運用開始で、住宅でも構造関係規定の審査が始まりましたが、設計図面にはこの「Fc」が記載されているはずです(書いてないとすれば、確認申請においても審査機関が見落としたことになりますw)。さらにこのFcは、下限値として18(単位はN)、上限値は36となっています。

でも、この通りの強度でコンクリートを準備したとしても、想定している強度が出ない恐れがあります。そこで現場施工では、2つの指標でこの「Fc」に対して割増を行います。一つ目の指標は、「コンクリートの計画共用期間」というものに対して定める強度です。これを「耐久設計基準強度(Fd)」といいます。建物が想定する共用の期間に対してコンクリートの品質が劣化していくことを見越しての強度だと考えてください。

計画共用期間 年数 耐久設計基準強度
短期約30年18N/mm2
標準約65年24N/mm2
長期約100年30N/mm2
超長期約200年36N/mm2

そして、2つ目の指標は、設計で求められる強度品質を「確実に」実現するためにFcに対して少し強めで作っておく、品質基準強度(Fq)というものです。原則として設計基準強度Fcに対して「+3N」の強さを見込みます。また、季節によってコンクリートの化学変化の発生レベルに応じて加えられる数値は変わります。外気温の「平均気温」で対応が分かれます。これを温度補正ともいいます。

右記載以外平均気温8℃未満(寒中コンクリート)
平均気温25℃以上(暑中コンクリート)
+3N+6N

今回の設計では、Fc=21Nで設計いたしましたので、コンクリート強度の補正は+3Nとして24Nの強度でコンクリートを発注しています。でも、これで終わりではないのです。コンクリート強度については厳格な監理が求められますし、コンクリート自体は、砂、砂利、セメント、そして水の混合物ですので、それぞれの材料としての品質も求められます。この監理を行うにあたって、「どのようにコンクリートを混ぜ合わせるつもりなのか?」という「配合計画書」というものを作成することになります。今回のブログで使用するコンクリートについてはこんな感じです。

どこで採取した砂利や砂を使うつもりなのか?セメントはどこのメーカーのものか(別途、品質証明書が必要)など、その内容は多岐にわたります。そして重要なのは、

「想定した強度がしっかり出ているか?」

の検査です。これは実際に現場に納入されたコンクリートで「供試体」というものを作り、それを実際に試験機にかけて破壊させ強度を測るということをします。

供試体は、納入するコンクリート量に応じて採取する「セット数」が決まっています。1セット3本とります。そして、150立米ごとに1セットとなります。そして、検査は、コンクリートが納入されて7日(1週目)と28日(4週)の時間経過後で試験をしますので、今回2セット(6本)採取しています。これは品質管理上の「決まり」です。

供試体に何か紙のようなものが刺さっています。これは「塩化物試験」というものです。海砂を使う場合には砂に含まれる塩化物(塩気)が高くなり、鉄筋の腐食につながります。現在、海砂を採取してコンクリートを作ることはほぼないので、ムダかもしれませんが、それでも万が一の品質管理としては確認しておきたいところです。また、コンクリートに含まれている「空気量」も測定します。これも「いいあんばい」ってのがあって、多すぎても少なすぎても強度に影響してしまいます。

そして、スランプ試験といい、「コンクリートの柔らかさ」も計測します。スランプ試験については、以下をご参照ください。

土木施工管理技士&土木知識のWEB図書館 「コンクリートのスランプ基準や許容値・許容範囲を解説!スランプフローも」より

スランプコーンを引き抜いたときに、コンクリートがだらっとなりますが、その下がった高さを「スランプ値」といいます。このスランプ値が大きいと柔らかく、小さいと硬いということになりますが、だらっとなるのが大きければ柔らかいわけですので、より流れやすく施工性が高いということになります。流動性が上がるためにには水分が必要ですが、この水分量が多いと、ひび割れの原因にもなります。これも「いいあんばい」ってところが重要だったりします。ただし、昨今、国交省ではコンクリートの品質試験でのスランプ値の測定を、簡略化のために省略する動きがあります。

さて、今回はベタ基礎の耐圧版に当たる部分の打設でのコンクリートですが、このあと、立上りの部分のコンクリートを打設します。もちろん、その際にも今回同様に、立上り部分のコンクリートの品質を試験する必要があります。

これらの試験を行うとわかってくることがありますが、設計で21Nで問題ないことを構造計算などで確認しているわけで、さらに現場では補正をかけて強度を割り増しているわけです。そして、JISの工場から出荷されるコンクリートの破壊検査を行うと、例えば24Nで発注したコンクリートが補正前の21Nを下回ることも、24Nで補正した強度を下回ることもなく、かなり高めで結果が出ます。25~29、時には30を超えます。言い換えますと、コンクリートに関しての現場での施工監理ではかなり安全側にモノを考えているわけです。

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