基礎にまつわる謎の説明#2

基礎にまつわる「変な説明」というか「都市伝説」みたいなものを披露する「#2」ですw

今回も、株式会社M’s構造設計 代表取締役社長の佐藤実先生がSNSで話題にした内容で、わかりやすイラストをお借りしますw

【誤解2 地盤補強費用は基礎費用に追加される】

基礎の誤解1 株式会社M’s構造設計 代表取締役 佐藤実先生

これ、すごく微妙な話なのですが、イラスト内にも記載がある「支持杭」という言葉がキーワードになります。一般的に地盤を補強するという工事には2つの考え方があります。そしてどちらもその工事が目的とする内容が全く違います。1つ目は「地盤改良」というもので、2つ目は「支持杭」というものです。

誤解1でも説明しましたが、地盤の強さの強弱で基礎配筋は変わりませんw 基礎は建物重量によってその強度が決定されます。そして、基礎の役割は、基礎自身は変形や破壊がなく、支えるべき建物重量を一旦うけ、それを地盤に伝えるという目的になります。

ここで、ちゃんと考えないといけないのは、建物重量が地盤に伝わったときの状況で、その地盤がもつ強度が伝わった力よりも弱い地盤だと沈んだり変形したりします。なので、基礎がしっかりと力を受けても、地盤自体に問題が発生しないようにする工事が「地盤改良」というものです。

この地盤改良という工事は、地盤全体を建物の荷重を受け付けることを想定していますので、比較的浅いところまでを改良するということになります(地盤改良にもいくつもの手法がありますが、ここでは説明を割愛します。せいぜい10m程度のところまでの地層とイメージしてもらえればと思います)。

一方で、地中の深いところにあるカッチカチの地層まで建物重量を伝達させようとする工事が「支持杭」というものです。この場合、杭の頭は地盤面にある基礎の内部まで突っ込まれて「基礎と一体」となっている状態になり、この杭で建物+基礎を支えるという仕組みになります。このやり方が採用されるのは、でっかく、背の高い建物で、かつ重量も重い建物で、表層~浅い地盤で到底、建物を受け付けるような強さがなく、地盤面を調査すると、相当深い地層までいかないとそういった地層(支持層といいます)が見つからない場合に用いられることが多いです。

で、この場合「支持杭」という計算になります。もう一度いいますが、基礎は建物重量を地盤に伝達するためのものです。つまり、「支持杭」というものを採用するのであれば、この杭によって相当深い地層にまで建物重量を伝達させるわけですので、この杭は基礎の一部になります。当然、建物重量を支える「肝」になるのはこの「支持杭」ですので、直接建物を支える基礎部分は、それほど強烈な強度を必要とはしません。この「支持杭」を採用する基礎を「杭基礎」という場合もあります。

イラスト中にも記載がありますが、支持杭で基礎を計画するというのは、基礎工事に杭の部分がプラスオンされるわけではなく、建物重量を直接受けている基礎部分を目減りさせた分、支持杭の部分にそれを割り振るという話しになります。これを「トレードオフする」という表現で説明されています。

基礎の設計を行う場合には、まず、直接、基礎が受け持つ建物重量を計算した上で、必要な耐力が地盤にあるかないか?ということを検討し、なければ、どの程度の深さの地層で受け持つことができるのか?というのを地盤調査の結果を元に判断し、それが1m程度であれば、表層改良で、10m程度までなら柱状改良でというような「地盤改良工事」で対応しますが、この段階ではあくまでも、「これっくらいの強さの地盤じゃないともたない」というのが前提条件として基礎の設計します。

ですが、とても深い地層まで到達させる必要があるということを地盤調査でつかんだ場合には、逆に、支持杭の設計し、その杭で基礎設計を行うわけですので、直接建物重量を受けてる部分は極端に言えば、壁の一部くらいのイメージで考えても差し支えないわけです。

ところが現実的にはどうか?というと、建物重量を計算することすらしていないので、「200%、絶対問題ない!」という地盤を要求し、かつ、建物重量に左右されるような基礎設計を行わないため、営業的な説明の場合に「地盤補強費用は別途必要になります」、つまり、追加費用として請求されるわけです。

ちょっと脱線しますが、以前にご紹介した「もうすぐ始まる建築基準法大改正施行 その1~6」でも説明しましたが、来年の大改正により、基礎設計についても審査され、かつ「基礎地盤説明書」というものが必要になります。一般的な設計を手掛けている設計事務所などはこの「基礎地盤説明書」をちゃんと提示できますが、現状、住宅、それも木造住宅の2階建くらいしか手掛けてないところは、この「基礎地盤説明書」を明示するノウハウを持ち合わせていないところが多いです。ですので、地盤に関する説明という部分で、その設計士などの経験やノウハウのレベルをみることはできるというわけです。


◎株式会社M’s構造設計

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