基礎にまつわる謎の説明#4

基礎にまつわる「変な説明」というか「都市伝説」みたいなものを披露する「#4」ですw

今回も、株式会社M’s構造設計 代表取締役社長の佐藤実先生がSNSで話題にした内容で、わかりやすいイラストをお借りしますw 毎度毎度すみませんw

【誤解4 基礎梁のコーナーハンチで耐震性能アップ】

基礎のコーナー部分、特に外周部における隅角部にイラストのようなハンチをつけることで、

基礎を強固にし、耐震性能をアップさせるために基礎のコーナー部分にハンチをつけることを標準施工としています!

ということを営業トークとしてお客様に説明している工務店や設計士がいることは事実です。はっきり申しますが、この説明を受けた場合には、建築を依頼することを考え直したほうがよいです。

確かに、このハンチが基礎の強化につながっているかどうか?という視点では、ないよりはあったほうが基礎の耐力に対してなんらかの強化に寄与しているとは言えますが、それが「耐震性能をアップさせている」とまでは言えません。

ハンチをつけることの意味を考えると、基礎の立上りがハンチを付けた部分だけが「幅が厚くなる」のですが、これが仮に基礎の耐力に寄与するとみることができるのは、「「せん断抵抗」という基礎を引き裂く力に対して強固になる」ことだけです。

ですが、それが言えるのは、計画している基礎の高さ及び幅で、この基礎に対して曲げやせん断が発生するのか?という計算であり検討であるはずです。そして、ハンチをつけることで「せん断抵抗をアップさせる」とするのであれば、逆に隅角部に強烈な曲げがかかり、結果、大きなせん断抵抗が必要になるということになります。

一般的な基礎設計とは、コストや施工性を考え、できるだけ「同一断面」での計画を行うことにあります。ですが、高さの高い建物や、室内に大きな積載物があるとか、雪が強烈に積もるなどにより、相当大きな荷重に対応しなければならないときに、一部の断面だけ形状を大きくし抵抗させるということはあります。その際によく用いられる手法として、徐々に断面を大きくする「テーパー形状」にしたり、ハンチをつけることになります。

一般的な木造住宅(2階建程度)において、このような基礎の断面形状を工夫しなければならないほどの荷重に対する対応が必要だとすると、それは、「基礎の上に立つ柱の間隔が相当大きく、柱1本が引き受ける荷重がとてつもなく大きく、かつ、それが隅角部に偏っている」ことになるわけですが、これは、そもそも、間取りなどの計画にかなり無理があることを示すことになります。言い換えますと、隅角部にハンチをつけなければならないほどの強化が基礎に必要だということは、正直、一般的な住宅の間取りの設計としては構造を無視し、とんでもない間取りの構成になっているのでは?ということになります。

次に「耐震性能をアップする」ことに、このハンチが「つけないとき」と「つけたとき」でその性能がアップするレベルの効果が出るとは言えません。耐震性能というのは基礎だけが受け持つ話しではなく、あくまでも上部構造としての建物から流れてくる力を、地盤面に対して力を伝達することが基礎の目的で、その際、その力を受けても基礎自体が破壊しないということを保証することが設計なわけです。

つまり、基礎の隅角部にハンチがあろうがなかろうが、ハンチの有無で耐震性能が変わるとすれば、ない場合には基礎が破損してしまう危険があるということになります。それは基礎自体の設計としては「意味がない」わけです。必要なのは基礎の構造計算であり、省施工を目指すことにあるわけですが、基礎の構造計算ができない工務店や設計士ほど、こうした「おまじない」なものをつけることで、自分たちに設計のノウハウがないことを隠すことをします。

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