基礎にまつわる「変な説明」というか「都市伝説」みたいなものを披露する「#7」ですw
今回も、株式会社M’s構造設計 代表取締役社長の佐藤実先生がSNSで話題にした内容で、わかりやすいイラストをお借りしますw もはや毎度テンプレのご挨拶になりますが、すみませんw
さて、今回は、次のような内容を取り上げたいと思います♪ ちょっといわゆる専門家向けな感じですが、その専門家の人の「知識レベル」を計るにはもってこいかもしれませんwww
【誤解7 布基礎とべた基礎は併用できない(異種基礎禁止)】
タイトルにあるように、「布基礎」を採用する建物で一部「べた基礎」にするとか、あるいはその逆とかをやると、それは「異種」を採用することになるのでダメ!ってことを言われる方がいます。これは「建築基準法施行令」に記載の以下の条文によるものです。
建築基準法施行令 第三十八条
建築物の基礎は、建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝え、かつ、地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。
第2項 建築物には、異なる構造方法による基礎を併用してはならない。
この「建築基準法施行令第38条第2項を「異種基礎禁止条項」と言うのですが、この解釈を完全に誤解している自称専門家というのは非常に多いです。そもそも、なぜこんな条項が定められているのか?ということを理解することが、この「異種基礎禁止条項」を理解することになります。
ここで注目してほしいのは、イラストにあるように、基礎の各部がなにを支えているのか?というところです。杭基礎の場合には、杭自体がその上の基礎に「めりこんで」います。つまり、上の基礎と杭は一体となって、上からの荷重と、横からの水平力に抵抗しています。逆に、直接基礎というのは、地盤に基礎を載せているだけで、仮に杭状のものがあったとしても、それが基礎の中まで食い込んでいないのであれば、単に地盤を固くしているだけです。水平力については、地盤にめりこんでいる基礎部分で抵抗させているにすぎません。力の負担、抵抗の考え方が全く違うわけです。
また杭基礎と直接基礎を併用したとすると、杭基礎は支持地盤という固い地層まで杭を到達させて建物の重量を受けますが、直接基礎は地盤とはいえ浅いところの地盤の強さによって支えられているものです。ということは、仮に地震の影響などで地盤に変形があったとすると、杭基礎の部分は沈下しないですが、直接基礎の部分は地盤変形によりモロに影響受け、沈下が発生するわけです。つまり、杭基礎の部分は問題がないが、直接基礎の部分は沈下する、といった不同沈下をする可能性が高いということになります。当然、建物一部が大きく沈みますと、躯体は割けますし、その影響で杭の上部の構造も壊れるわけです。
これが理由で「異種基礎禁止条項」というものが定められているのです。
これを自称専門家の方は、「布基礎」と「べた基礎」という言葉の違いだけで「異種基礎」であると思いこんでいるわけです。以下の画像をご覧ください。
布基礎もべた基礎も直接地盤に「載っている」状態にあることには違いがありません。これを「直接基礎」と言っているのです。「異種基礎禁止」とは、布基礎とべた基礎を併用することではなく、「直接基礎」と「杭基礎」を併用することを禁止しているのです。
ただし、例えば建物を増築するときなどに使われる「エキスパンションジョイント(以下、Exp.J)」という、構造を完全にわける設計をする場合には当てはまりません。例えば、鉄骨3階建てのビルの横に小さな木造平屋を建ててそれらを繋ぐという計画の場合、このExp.Jを用いますが、鉄骨部分が杭基礎で作られているとしても木造部分も杭基礎でつくらなければならないわけではありません。
Exp.Jでは構造が完全に切れているわけで、仮に地震などで建物がゆれて損傷したとしても、このExp.Jの部分が壊れることで双方の建物に甚大な被害でないようにするわけで問題ないのです。
表現されていることの本質を理解しないで、専門家として仕事をしている人はものすごく多いです。
◎株式会社M’s構造設計
◎基礎にまつわる謎の説明