能登地震以来、おおよそ月4件程度くらいの耐震診断・補強プラン作成のご依頼がきていますが、今日もその診断調査の日でした。耐震診断に伺う際に必ずお聞きしていることとして、建築当時の「図面」などがあるか?ということなのですが、やはり図面がないことのほうが多いです。ですが、今回は結構多種多様な図面がありました!図面の存在としてたいへん助かるのは、構造的な部分での情報となる「伏図」というものです。
伏図があれば、どこが耐力壁となりうるか?という想定がしやすくなるのと、追加でどこに耐力壁を作ったらよいか?ということも計画しやすくなります。これは以前にもブログテーマにしましたが、「基礎-土台(2階な床梁)-梁」で構成されている面でしか有効な耐力壁にはならないわけで、その手がかりとしての「基礎」や「梁」の場所がある程度想定できるからです。
また、今回の図面資料には「矩計図」もありました。これも重要な情報です。特に基礎の断面詳細の記載がある「矩計図」は、マジでたすかります。
この物件は昭和54年の建築なのですが、たいへんしっかりとした図面でした。ぶっちゃけ、令和の今でも「4号特例」だとか言って、舐めた図面しか作らないところは多いわけですから、ちゃんと責任感をもって建築に携わっているか(いたか)は、作成された図面にも表れるわけです。
仕上げ表もありますので、面材関係の状況もおおよそ推定できます。これも耐震性の評価の際には非常に役に立ちます。
立面図には斜め線が記載されていますが、これが「筋交い」を意味しています。当時の筋交いの設置計画は、おおよそ外壁面に配置することが多く、内部への配置はないわけではないのですが少ないです。
さて、図面の帯を見て納得です。「日本電建」さんは今はもうありませんが、昭和54年当時は在来木造住宅メーカーとしてはかなりトップのシェアを誇っていた会社です。これまで耐震診断では保管されている図面を拝見していますと、日本電建さんの住宅の場合はこのような図面が保管されている割合が高いです。
今も昔も同じですが、こうした「図面」というのは、どのような意図で、どのように作られたのか?という「具体的な記録」なわけです。この記録なしで建物のメンテナンスは計画できません。特に、構造体をいじるようなメンテナンスを行う場合、例えば、エアコンの設置ひとつとっても、筋交いを切り抜いてしまうような不手際をしないようにするには、図面などの記録が必要なのです。もちろん、その図面と違っている場合もないわけではありません。ですが、その際にもある程度の「類推」ができる「手がかり」にはなります。
建物が建ってしまってからが図面の存在価値が大きくなるとご理解いただければと思います。