工事関係者を装う悪質訪問販売と強盗の関係

今日は、お客様のところに伺って話題になったことを取り上げてみたいと思います。

最近の事件で、住宅に押し入り住人を縛り上げ、さらに殴打し殺人まで犯してしまうという強盗致傷致死事件が相次いでいます。どうやら、それらも、いわゆる「闇バイト」の手口であるとも言われていますが、建築工事においても、これまでリフォームなどの工事関係者を装い、高齢者のお住まいをねらい、判断力の低いお年寄りをターゲットに高額請求を行う事例も後を絶ちません。

一例をあげますと、以下のグラフは、独立行政法人 国民生活センターが出している「屋根工事の点検商法のトラブルが増えています-典型的な勧誘トークを知っておくことで防げます!-」にも記載されている情報ですが、「屋根工事の点検」を騙った、いわゆる「点検商法」での相談件数の推移です。

独立行政法人 国民生活センターホームページ
屋根工事の点検商法のトラブルが増えています-典型的な勧誘トークを知っておくことで防げます!-
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20231011_1.html

このサイトでも公開されていますが、巧みなトークで屋根工事をすすめてくる事例や、たいへん悲しい話しではありますが、台風や地震で屋根が破損していたりすると、単にブルーシートをかけるだけの作業にも関わらず、高額な施工費の請求をするなどの事例もあるくらいです。

屋根などは、お客様ではめったに点検や実情を見ることができない部分だということにつけこんで、不安をあおり、如何にも誠実な業者のごとくモノを言い、結果として高額請求していくということをやるわけですが、歴史的にみても、実は、この手のやり方は、昭和の時代から続いているような話しでしかありません。

国民生活センターのチラシではあまり触れられていませんが、最近、特に多いのは、

近所で屋根工事をしていて、あたりを見回したら、おたくの屋根に瓦のズレをみつけたので声をかけさせていただきました!もしよかったら、現場近所なんで、はしごとかもってきてみますが、どうしますか?

というものです。これ、なんとなく、気を効かせて話しをしてくれてる、なんていい人なんだろう、って思うかもしれませんが、はっきり言いますが、そんなことを言う職人はまずいません。そもそも、近所で仕事をしてて瓦のズレなんかがわかるのは、せいぜい、1軒となりくらいで、それ以上になってわかるような瓦のズレは道路からみてたって、素人のお客様がみたってわかるくらいのズレですw

近所で、しかも1,2軒隣くらいで、瓦の工事をはじめとする屋根工事をしていれば、「近所で屋根工事をしていて~」なんて言うまでもなく、普通は「そこで工事をしているものですが」から始まるはずです。

そして、今日のブログでもっとも言いたいことは、こういう悪徳商法がはびこっているということではありません。先ほど、昭和の時代から続いているといいましたが、私どもが先代や先々代から注意され続けてきたことは、

この手の悪徳商法を行う連中が、その家の状況を情報として窃盗団に売る

ということです。訪問してきたこの手の業者は、玄関先に脱いである靴や、車の出入り、また、玄関から見える範囲や、道路から見える縁側などの様子から「家族構成」を予測します。例えば、玄関に小さい子供の靴があれば、若い世帯が同居している可能性があるという判断をします。また、日中の車の出入りが朝出たっきり、夕方までカーポートがあいていれば、日中はメインになる家族が働きに出ている、留守宅の確率が高いなどです。また、省エネをあまり意識しない時代ですと、家に積もった雪の量で人のいるいないを判断することもありました。人がいれば暖房をつけるので雪がとけます。ですので、雪のない家は1日を通して人がいる、雪がどっぷりのこっているところは、ほとんどいないというような感じです。

そして、問題なのは、高齢者であるおじいちゃん、おばあちゃんがお二人で暮らしているということが予測できてしまった場合なのです。この手の工事業者は、飛び込み営業で見ず知らず家に上がり込むことを目的とします。もちろん高額な工事を請け負うこともさることながら、この家には高齢者が二人だけ、あるいは、おひとり暮らしであるということがわかれば、それは、窃盗団などには有益な情報になってしまうというわけです。

私どものような建築業者は、チラシなどで周知するような営業活動を行うことはあっても、個別の訪問については行いません。それは、お客様に余計な不安を与えないということはもちろんですが、自らの営業行動が誤解を招く恐れがあるということを理解しているからです。首からIDカードを下げていたとしても、それが確実に全うな営業活動であるという証にはなりえません。今の時代、WEBなどでの問い合わせもできますし、定期的な新聞広告などで会社の周知は行うことができます。お客様からのアプローチがあって初めてご訪問という流れにしかしておりません。

そして、ご近所へのご挨拶も可能な限り「お客様と同行」させていただくことを原則としています。特に隣近所へのお声かけは、工事後のご近所づきあいのこともありますので大事なことです。そこで、ご近所に「工事が行われること」、「業者がうろつくこと」、そしてもっとも大事なことは、「それらを監理する会社を明らかにする」ということです。

また、一旦現場を預からせていただきましたら、不審者にも目を光らせます。工事業者は作業服をきています。作業服姿が不思議ではない状況ですが、それがゆえに、全く工事に関係もない輩が作業服を着てうろつくこともあります。したがって弊社での工事では確実に現場に入ってくる職人、作業員は見知ったものしかいません。

知らない人が現場に近づくと「だれ?」という声かけはもちろん行います。たまに、ご近所のお父さんだったりもしますが、これも、防犯上の声かけだといことはすぐにご理解いただけます。それは事前にお客様とあいさつに伺っているからです。

悪徳商法で金が絡むだけではなく、昨今では「命」を奪われることにもつながります。現場の管理という側面では「防犯」という部分も実は重要なのです。


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