改正労働安全衛生規則と熱中症対策

前回、ブログでも紹介しました「2025 NEW環境展&地球温暖化防止展」ですが、たいへんな盛況ぶりで、弊社子会社のFKTlab有限会社のブースにも、非常に多くの方にお見えいただきました。

「暑熱対策」を全面に出した展示となりましたが、以前は倉庫、農産業関係の方の暑熱対策として「遮熱」というものを探りに来られる方が大半だったのですが、なぜか今年の展示会では、製造業の工場を運営しておられる方、また、一般的な事務所、店舗などを運営する方がたいへん多くブースにお見えいただいた結果となりました。そして、その方々が異口同音にお話しされたのが、

「改正労働安全衛生規則」

でした。

令和7年6月1日より施行される「改正労働安全衛生規則」では、明確に「熱中症」に対する対策を、

・体制整備
・対応のための手順作成
・関係者への周知

という部分で事業者に「義務」づけされるように規則改正が行われるわけです。ざっくり言えば、職場内でなんらかの原因で熱中症を発症した場合、改正規則で定められた熱中症対策を怠った事業者は、都道府県労働局長または労働基準監督署長から、次の使用停止命令等を受けるおそれがあります(法98条)。

1.作業の全部または一部の停止
2.建設物等の全部または一部の使用の停止または変更
3.その他労働災害を防止するため必要な事項

さらに、熱中症対策の実施義務に違反した者は「6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」に処されるほか(法119条1号)、法人に対しても「50万円以下の罰金」が科されます(法122条)ことになります。もちろん、仕事中のことですので「労災」になりますが、熱中症は環境によるものが大きいわけですので、そもそも職場環境を熱中症発症リスクを低下させる義務が事業者にあるというわけです。

ただし、規則には、一応、以下のような条件があります。

ここで、WBGT28度と書かれていますが、WBGTとは、「Wet Bulb Globe Temperature」の略で、湿球黒球温度のことで「暑さ指数」といわれるものです。この指数は、1954年アメリカのYaglouとMinardによって提案されたもので、海兵隊新兵訓練所での熱中症のリスクを判断するために考案されたものです。詳しくは、以下のサイトをご参照ください。

このような測定装置を元に、黒球温度、乾球温度、湿球温度を計測することで、ある計算式から算出される指数です。

環境省ホームページ 暑さ指数(WBGT)について より
環境省ホームページ 暑さ指数(WBGT)について より

なお、WBGTの測定器はすでに様々なものが販売されておりますが、改正規則としては、労働環境のWBGTが28度以上であるかないかを測定し、28度以上であれば熱中症対策を社内の労働環境管理としてコントロールしろというわけです。

さらに規則は、「気温31度以上」というものもありますので、WBGTが28度以下であったとしても室内温度が31度を超えれば「熱中症対策」が必要であるというわけです。これ、実は、

「どんな事業者でもありうる労働環境」

なのです。時間的に「連続1時間以上または1日4時間を超えて」ということも条件にはいっていますが、一日の上では、例えば工場内が、31度超えたり、WBGTが28度を超えれば、その工場に熱中症対策を義務化するというわけです。

例えば、ラーメン屋さんの厨房は、麺ゆでのためのナベで湯を沸かしてますが、その厨房の温度は軽く31度は超えるでしょうし、焼き鳥屋さんの焼き場でも炭火で火おこししてあれば、もはや31度が40度を超す室温になってもおかしくありません。

これらは熱源が内側にあることから当たり前のように室温が上昇するわけですが、工場などでは、夏場、さんさんと降り注ぐ太陽光線により屋根・天井面は相当な温度になり、それが室内側に輻射熱として降り注ぐわけですので、当然、室温はあがります。さらに、シャッターなどを開け放して仕事をすれば、外気はどんどん入りますので、外気温が31度以上であれば、工場内の室温も31度となります。

そこで、空調が必要になりますが、これを恒常的運用するとなれば夏場の冷房費としての電力使用料は相当なものになります。いくらエアコンをフルで稼働させたとしても、天井面にある熱はどんどんエネルギーの低い室温の低いところに移動しますので、その熱エネルギーがエアコンの設定温度と平衡状態になるまで、エアコンはフル稼働することになります。また、焼き鳥屋さんでは炭火による熱の室内側への供給は尋常な量ではありませんので、たぶんエアコンではおっつかない状況になったりします。

いずれにしろ、職場環境がWBGT28度以上または気温31度に1時間でもならないという環境は、現状の建築様式では「ほぼ無理」なのです。そこで、目を付けられたのは「遮熱」という部分だというわけです。それでご来場者の方から「労安法規則が変わったので対策しないとダメなんです!」というお話を多数いただいたというわけです。

SDN-SHEET🄬が少しでも労働環境改善につながるように、弊社及び弊社子会社のFKTlab有限会社も努力していきたいと強く考えております。

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