既存建物の法適合調査

住んでる建物が建築基準法に適合しているかどうか?というのは「建築完了検査」を受け、「完了検査済証」の発行を受けなければ認められるものではありません。ちなみに、建築完了検査の検査率については国交省よりその推移が公表されています。

ここで「検査率」というものがありますが、これは確認申請を受けた建物に対して、完了検査を受けた建物の割合を示していますがが、平成10年では40%を切る割合でしかありません。特に木造住宅においては完了検査率は極端に少ないのは、工事途中での変更が多く、その大半が変更することにより法適合とならないケースが多いのではということと、そもそも完了検査を受け済証の発行を受けなくては「使用できない」という状況ではないことなどなどが理由として考えられます。住宅ローンなどの融資関係においても、確認申請済証が必要書類であったとしても、完了検査済証はそうでないなども理由です。

さて、完了検査済証を受けていない住宅にはどのようなデメリットがあるか?といいますと、特に、増改築を計画する場合、一部を残して新たに増築するなどの場合、既存部分の法適合は必ず前提となります。つまり、完了検査済証を受けていない建物は法適合できているかどうかが「わからない」ため、それが法適合しているということを調査し証明しなければなりません。

一般的には部分的に解体などを行って調査することになりますが、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物の場合、構造体自体が法適合されているか?という部分を調査したり証明したりすることのハードルはすごく高いです。特に基礎部分については、地中梁の状況、配筋状態なども調べるとなりますと、現実的に難しく、結果として解体後に新築したほうが早いということになります。

事業所などの非住宅の場合はそういった選択肢もありだとは思いますが、住宅の場合には家族の事情や思惑なども含めて、簡単に全解体し新築とはなりません。その結果の手立てとしては、既存住宅の「残す部分」に「離して建てて」、ほとぼりが冷めたら「こっそり繋ぐ」という措置をとることになります。もちろんこの行為は造反建築として処罰や行政指導の対象になります。その対象は、業務として携わった建築士、工務店はもちろん、建築主としてお客様にも及びます(どちらかというと、お客様の責任が最も大きくなります)。

さて、それでは既存の住宅に対しては完了検査済証がない場合には増改築という行為ができないのか?ということになりますが、簡単に言えば「既存部分が法適合している」ことを調査し証明し、それを確認機関が認証すればよいわけです。木造住宅の場合、鉄骨造や鉄筋コンクリート造よりも実はそのハードルは低いです。

この場合、法適合のカテゴリーごとに調査し、問題がないことを証明していくことになりますが、隠れてしまっている、いわゆる、構造という部分以外については、目視し状態を図面化し、現況の写真などを付ければ特段難しくはないです。問題は「構造の部分」です。

法適合のために「構造計算」を行う必要はありません。もちろん、梁や柱などを調べて構造計算を行うことで耐力に問題がないことを実証することでもよいですが、法律的には「構造仕様規定」という部分に準拠していることを示せればよいわけです。

というわけで、まず、「基本になる部分の調査」を行ってきました。

まずは、基礎形状として、

 ・フーチングが存在しているか?
 ・幅はどうか?(120mm以上あるか)
 ・根入れ深さはどうか?(フーチング下まで240mm以上あるか)

ということが重要になってきます。そして最大に重要なのは、

 ・鉄筋が入っているか?(径とピッチ)

がわからないとダメです。従って、次回は、鉄筋の有無を機械を使って調査することになります。鉄筋の有無がわかるだけでよければ、いわゆる「金属探知」でも良いですが、それでは鉄筋の正確なピッチや径などを類推することはできません。従って、非破壊調査を行う検査機関(民間)に依頼して「調査報告書」という形で提出してもらうことになります。気になる料金ですが、規模にもよりますが住宅レベルでは、それほど料金が高騰することはないようです。これについては、後日、調査する予定です。

あとは、構造体として柱や筋交いの設置状況、また、2000年基準ということで柱頭柱脚金物の存在ということになります。ある程度、既存部分に手を入れる予定であれば、それほどむずかしい課題ではありません。

それでも、元々、完了検査済証を受けていれば、ここまで苦労することもないわけですので、この点は業界としても反省すべき話しだと思います。

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