構造計画はしっかりされてますか?

以前のブログテーマでも2025年4月からはじまる建築基準法に関する改正を話題にしていましたが、最近「X」で、私どもが主張していることと同様に、「今更、法改正に関して慌てているところはすでに終わっている」というポストを見かけました。

ですが、実際は、2025年どころから、もっと以前に設計事務所としての業務に影響を与える改正はあったのですが、それについて話題にされることは「ほとんど」ありませんでした。大手、建築関連メディアも完全にスルーしていた改正。これが、

建築士法の一部を改正する法律(平成30年法律第93号)

というものです。施行は令和2年3月1日からです。

この法律改正で騒がれたのは、「建築士制度の見直し」ということで、建築士の資格取得の要件としての受験資格から「実務経験」が除かれ、免許登録条件として制定されたことです。つまり、大学に在学中に所定の単位を取得できていれば受験資格が与えられ学科試験・実技試験を受けることができ、それに合格すれば、卒業後、実務経験をつんで「有資格者」として免許登録できる、というものです。これにより、建築士資格にチャレンジできる若い世代が増え、有資格者数の底上げを図ろうというものです。

また、学科試験合格者が実技試験にチャレンジする機会も、学科試験合格後の2年で2回という規定から、4年で2回という形になり、より受験タイミングを広くとれるようになりました。

忙しい実務者には、学科試験から実技試験への準備期間を長くとることもでき、携わっている業務期間により調整もしやすくなったことから、資格取得に向けた動きも取りやすくなったと思われます。

ところが、この改正には、

建築士事務所の図書保存の制度の見直しについて(建築士法施行規則第21条関係)

というものもありました。どういうものか?といいますと、

図書保存の見直しで、保存される図書が明確に定められているということです。この規定の中で、

・基礎伏図
・各階床伏図
・小屋伏図
・構造詳細図

という構造関連の設計図書はもちろん、

・構造計算書等

という文言にありますように、それら設計図書の構造部分の法適合根拠となる「計算」も含まれています。ここでいう「構造計算書等」とは許容応力度設計などの構造計算だけを指すわけではなく、仕様規定で構造計画がなされているのであれば、耐力壁量の計算、N値計算などの柱頭柱脚の金物計算も含まれているということなのです。

言い換えますと、令和2年3月1日以降の建築物に関する設計については、これらの図書の保存が「義務」づけられているということなのですが、保存するためにはそれらの設計図書が「存在」していなければならないということなのです。

現行法における4号特例では、これら構造関係規定の第三者機関の審査が省略されています。これが審査省略を逆手にとって設計を行わないという悪しき慣例をつくってしまったわけですが、少なくとも令和2年3月1日以降の物件では、事務所保存図書となっていますので、その図書がなければなりませんし、保存期間は15年に延長されていますので、当然令和6年の今、保存されていなければ「建築士法違反」ということになり、罰則の対象になります。

2025年の法改正は単に構造関係規定の見直しにすぎませんので、その内容が変わるだけで設計の本質はかわりません。したがって、4号特例の廃止縮小に今更あわてている、あるいは対応をあせっているということは、すでにこの令和2年の建築士法改正には対応していないわけですので、罰則対象の事務所ということになります。ですから「今更」なわけです。

また、設計事務所登録をしているところには、許可人である地方自治体(主に都道府県)から「立ち入り検査」が実施されています。その際に、保管図書は保管状況を閲覧確認されますので、その存在がないとなりますと、指導の対象になります。

さて、令和2年3月1日以降に建物を新築したり増築したような方、お手元に、構造関係規定の設計図書はありますでしょうか?もしお手元になければ、依頼した設計事務所さんや工務店さんにお問い合わせください。保管していなければ、依頼した設計事務所は「建築士法違反」となります。

悪徳業者を糾弾するようなサイトや動画などは数多くありますが、最も基本的な部分で「設計がなされていない」という実態が、4号特例の対象である「住宅」ではたいへん多く見受けられるという現実をお知りいただければ幸いです。

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