前回のブログで「構造の基本中の基本」に触れましたが、実は、この基本は、福井県が誇る「杉」を「構造材」として使うにあたっての重要な工夫の原点だと考えています。
その理由を以下に示します。この資料も「県産材を有効活用するセミナー」で使用したものですが、それを公開します。
この資料にも記載してますが、杉は総じて「弱い」という現実があるのです。そもそも、杉材というのは、室内に使う「造作材」や、柱や根太、垂木といった「細長い部材」での利用が主なのです。総じて弱いのであれば柱に使うことも不利だと考えがちですが、木造軸組では柱はそれなりの本数が配置されれますので、一本一本が負担する荷重はそれほど極端に大きくはならないので、強度よりも「調達しやすい」もののほうが重宝されるわけです。従って、柱や根太、垂木などの「細長い部材」で数多い本数が必要な部材に対しては、調達メリットのほうが重要視されるのです。
それで今回問題にしたいのは、「梁」という構造材を「杉」でまかなうための手法として、どのような工夫が必要なのか?というところなのです。
杉は強度がベイマツなどに比べ低いことは周知の事実です。ですが、地域材として調達しやすい木材の樹種が杉であれば、それを梁なども含めて、造作材だけではなく構造材にも使う工夫ができれば、かのウッドショックでもそれほど影響なく施工ができるのですが、構造が理解できていないと、柱や梁に使うものはベイマツやその他集成材でなければならない、でも、ウッドショックで調達ができない、だから、工期を延長させたり、材料単価をあげる、といった短絡的な考え方になってしまうわけです。
また、「地産地消型」の循環社会を目指すことは環境配慮を考慮する点でも重要な手法なはずで、その点では、地域材の活用は「必要不可欠」なはずです。産業面においては、林産業の振興という部分にも寄与しますし、なにより「山を管理する」ことにより、土砂崩れなどの災害面においても寄与できるはずなのです。
木造建築は低炭素社会にも貢献するといいながら、その実は、使いやすい材料を使うだけでしかなく、とても自然を敬うといった意識は見られません。自然素材をうまく使うには、その素材の性質をしっかり理解し、使うための工夫が必要なのです。