耐震補強プランを考える上で最重要視しているのが「偏心率」というものです。以前のブログでもご紹介しましたが、この偏心率が極端に偏っていると建物全体がねじれだし、回転するように倒壊していきます。
以前のブログでもふれましたが、自由空間として注文建築が主流になりはじたのが、ちょうど新耐震基準に切り替わったくらいからで、筋交いの量的な規制については満足しているものの、偏心率を計算するとそのズレが大きく、結果として耐震性が低い建物になっているのが、2000年以前の新耐震基準の住宅には多い傾向があると考えています。また、旧耐震においても、比較的新しい住宅、つまり、昭和56年に近づけば近づくほどこの傾向は強く、むしろ昭和40年代またはそれ以前ですと、建物の間取りの構成がある程度定型化している部分もあって、偏心率は安定する傾向があるともいえます。
さて、耐震性をアップさせる耐震補強計画においては、この偏心率を重視するために、できるだけ重心位置に付近での「小部屋」に対して耐震補強を行うように計画を立てることが多いです。あくまでも間取りの構成にはよりますが、間取りを俯瞰して見た時に建物中央部に押入や階段室などがある場合には、その部分の耐力壁を強化することで建物内に「コア」を作るような工夫をしています。
画像はその事例です。元々は階段と押入があった場所ですが、階段は片面はオープンになっている設えでした。
ここを階段室となるように両側に壁を作り、さらに、階段が上がりきる部分の1階の壁も耐力壁として強化しました。
画像は元々、階段と押入があった場所ですが、階段は片面はオープンになっている設えでした。もちろん耐震補強では全体で耐力を確保する必要があるわけですが、バランスを考えないと偏心率が悪化するわけですので、間取りの構成やリノベーションの計画などをベースにして、画像のような「コア」を作りながら計画するとかなり楽に耐力をアップすることができます。つまり、耐震補強計画というのは、間取りの構成を見定めることが重要なのです。