耐震改修を行っているとき出くわす「びっくり」っていうのがあるんですが、意外と「致命的」な問題に遭遇することがあります。画像をご覧ください。
天井を解体したところ、上を見上げるとなぜか「白っぽく」見えるところがあります。それも点在してwww これなんだと思います?ゴミとかではありません。これ、「空」なんです。外観の写真からみても、古いのは古いですが、特段問題を感じさせることはありません。
小屋裏の状況を確認した際も、特段問題があるとはわからないレベルだったのですが、解体して空が見えた段階で確認すると、なんと、裏板(野地板)に直接、瓦が葺いてある施工がなされていたわけです!本来屋根は雨水の侵入を防ぐ目的がありますが、金属屋根でも瓦でも、そのモノ自体の防水性能を求めているわけではなく、「下葺」といわれる防水層があって、その上に仕上げ材として、瓦や金属板が葺かれるのです。
特に瓦などは、形状が湾曲しているわけですき間だらけです。従って、いくら綺麗に瓦を積んだとしても、最初の下葺が悪ければ強風による逆水(下から上に雨水が吹き上がること)で、瓦と下葺材の間に水が入ります。従って、この下葺材が雨水侵入に対する「最終防衛ライン」となるわけです。もう少し付け加えますが、屋根瓦は、その重量によって強風に対する対策や、重量による「抑え込み効果」による地震への対応が目的です(瓦重いから地震には不利といういうのは、重量に対する躯体設計が脆弱なために発生することであって、瓦が問題ではありません。これを勘違いしている建築屋さんは非常に多いです)。
なんで天井壊すまでわからなかったのか?ですが、この空が見える箇所を真下からみると隙間は見えないのです。屋根は勾配になっており、瓦屋根なので勾配が強く、たまたま、勾配に対して垂直な箇所から見上げると隙間が見えたということなのです。あわてて屋根を点検しましたが、下葺材の存在はありませんでした。残念ながら新築当初の施工については、いわゆる「不良」ではなく、「手抜き」レベルか、それとも「瓦施工に対する知識不足」としか言いようがありません。
さて、日常的な雨でも雨水が侵入していたようですが、古い住宅で気密性も断熱材もない状態ですので、濡れては乾くを繰り返していたようで、冬場でも部屋で暖房をつければ、その熱がそのまま上に上がりますので、結果として冬場お天気が続かなくても乾かすことができたという、皮肉ともとれる状態だったわけです。
また、細部にわたって調査しますと、軒先に積雪による「たわみ」があり、一部、破損もございました。使われていた屋根垂木は一般的に福井で使われている材よりも細く、かつ、その間隔も少々粗い感じです。というわけで、緊急で屋根改修を行うことになりました。
今回採用する改修は、瓦から金属屋根に変更するやり方を取ります。積雪によるたわみもあるので、屋根そのものにこれ以上重量をかけないようにするためです。さらに、裏板(野地板)の状況が非常に悪いので、現状の板の上で構造用合板を張り板面を補強します。このとき裏板(野地板)を外すと既存の屋根垂木を痛めかねないので上張りとします。耐震改修の補強計画は、積雪1m、重量のある屋根で計画していますので、屋根を軽くすることは計算想定よりも有利に働きますので、設計変更はしません。
耐震改修に限らず、いわゆるリフォーム工事には「まさか」がつきものですが、これまでの実務経験で最大レベルの「まさか」だったと思います。