木造と言えば「住宅建築」というのがメインではありますが、昨今の経済事情や、CO2削減など低炭素社会実現に寄与するために、いわゆる「非住宅の木造建築」というのもが見直され、徐々に増えてきています。
例えば、学校の校舎などは私どもが幼かったころは「木造校舎」は当たり前にあったのですが、防火基準の高度化や、耐震性の担保などの観点から、鉄筋コンクリート造の校舎が主流になっていました。ところが、木造の温かみ、また、断熱性能や施工性に対しての注目が高まるなか、木造に対する防火基準の緩和措置なども含め法律改正もされ、全国的に少しずつですが作られ始めています。
非住宅を木造で建築する場合のネックは、その建物規模が住宅の比ではないくら「大きなもの」になることと、柱が一本も立たない、いわゆる「無柱空間」が大きいということが建物に要求される仕様になるということです。特に在来木造といわれる構造は、柱を多くつかって上からの力を支えるという方式ですので、大空間をつくるために中間に柱を立てない場合には、その両端で上の階もしくは屋根を支えるための「構造的な工夫」というものが必要になります。
大規模な無柱空間をつくるための工夫としては、強度の高い梁を使うことが前提となりますが、大きな梁を作ることは木材コストや運搬面を考慮しても限界があります。そこで用いられる手法としては「トラス」というものを組んでそれを梁として使うということになります。
これは、弊社で設計施工した機械製造工場ですが、天井高さ6m、そして、幅13.6mを無柱空間としてご要望され、それを実現した事例です。梁の大きさがそれなりの大きさのものを組合せて「トラス」という形態に構成していくわけですが、トラスの基本としては「三角形の集合体」といえます。
YouTubeチャンネルでは、建築の様子を公開しております。
さて、画像は「平行弦トラス」というものですが、様々なトラスの形態があります。
大規模な空間を要求される非住宅物件においては、製作範囲ギリギリの大きな梁で対応できる場合と、それ以上を要求される場合では設計の方向性が違いますので、コストを睨みながらの検討がかなり重要になってきます。そして、ここで重要になってくることに「木材を繋ぐ金物」というものがあります。日本には多数の金物メーカーがありますが、日々研究開発がなされ、より強く、木材との親和性に優れた金物が世の中に出てきています。
そのような中、先日「BXカネシン」という金物メーカーさんから、
MPねじ接合システム
というものが発表されました。これは、主としてトラスの部材の接合に用いられる金物ですが、弊社の事例のところでご紹介したトラスの金物と比べるとかなりコンパクトであることがわります。
実は、この「MPネジ接合」は、福井のような雪国では少々使い勝手が悪かったのですが、さらに研究開発が進み、今回、「MPネジ接合type-L」というものが発表されました。
これにより、「MPネジ接合」の約2倍の強度を持つことになり、多雪地域での対応もより簡単になりました。
金物を使用するための専門の研修も必要になります。弊社ではこの度、MPネジ接合及びMPネジ接合type-Lの設計者登録を行っております。
金物の進化は進みますが、これらを使いこなすために必須となるのは「木造の構造計算」です。さらに、コストを重視し、合理的な構造モデルを検討することも必要になります。建物は単に間取りや外観だけのデザイン的な設計だけでは成り立ちません。これは、建物の大小に関係ありません。
「どこまで合理的な設計ができるか?」
これがコストを落とす鍵になってくるのです。