耐震診断での調査では建物ががらんどうの状態で行うことはなく、普段の生活のままでの調査になりますので、壁面に家具などが置いてあると隠れてわからないこともあって、推測するしかないという場合もあるんですが、そこに窓がある、戸があるということに対する見落としはほとんどないのですが、テーマタイトルにも書いた「雨戸」についてはちょっとしたトラップがあります。
おそらく皆さんが想像している雨戸とというのはイマドキのもので、こんな感じかと思います。
このタイプの雨戸は、サッシ本体の外にもう一つ雨戸用のレールが取りつけられ、左右どちらかの壁の「外」に雨戸収納のBOXがつくという感じです。この場合ですと、雨戸収納用のBOXには躯体としての壁があるので、この部分が耐力壁となりうる可能性は高いのですが、古い建物の雨戸で木製の場合ですと、こういう仕組みにはなっていないことがほとんどなのです。
下の画像は昭和30年代に建築された住宅ですが、その雨戸部分です。
縁側などの大きな開口の部分に木製のガラス戸がありますが、画像右手が雨戸の収納場所になっています。そもそも、木製戸に強烈な雨がたたきつけた場合、古い建物の場合にはアルミサッシほどの水密性はありませんので、吹き込んできますし、暴風雨となれば薄いガラス面にちょっとしたゴミなんかが飛んできて当たれば簡単にわれてしまいます。したがって、その昔の住宅での雨のときの運用や、夜間の運用は、きっちり雨戸を閉めるというのがルールだったわけです。今では水密性は高いの単なる雨の場合に雨戸を閉めるということはないと思いますし、その用途としては暴風対策としての存在のほうが大きいかもしれません。
で、これが耐震診断のときの罠になるというのは以下の画像が理由なのです。
これは、先の画像の室内側なのですが、雨戸の部分をみますと、妙な窓のようなものがついています。これなんでこんなところに窓がついてるかっていうと、雨戸を引き出すときに、ちょうどこのラインで雨戸の裏桟をつかむことができるようにするための窓なのです。雨戸を戸袋の中に収納するときは押し込んでいけばいいのですが、何枚もある網戸が戸袋の中で収納されているので、その一枚一枚を敷居鴨居の溝に入れ込むには、作業のスペースがいるというわけですw 現状を見る限り、「窓」なので、ここを耐力「壁」と判断するのは間違いで「開口部」として判断する必要があるのですが、意外と見落とすところであったりします。
先日の調査で見落としそうになった雨戸のところが以下の画像です。
縁側でなくとも、普通の窓に雨戸が付かないわけではないのであっても当たり前なのですが、雨戸は縁側の戸というような思い込みがあると、見落としてしまいます。画像のようにタンスでほとんどかくれてたり、なんとなくデザイン的なものかな?という見え方の場合、「罠」にはまることになりますwww
ところが、この雨戸の戸袋の部分ですが、ここは有効な耐震改修の際の耐力壁に改造できる部分であったりもします。例えば、窓がすでにアルミサッシに交換されていて、雨戸はつかっていないことが多いので、雨戸の壁を解体して筋交いや面材などで補強するということができる場所になります。特に、古い家の場合には有効な改修箇所になります。
調査を行うときには、すでにどこを改修すると合理的か?ということを念頭に置きながら調査しています。建物の間取りの構成などを見極めることで、コストも抑え、生活にもできるだけ影響を与えない改修工事が可能となります。