2025年改正基準法での落とし穴

もうすぐ4月ですw いよいよ改正基準法による審査本番になります。すでに4月以降着工分については現状でも審査は改正法によるものでの審査でしょうけど、確認申請が通りにくいとか、時間がかかるとかの問題指摘はあちこちで話題として取り上げられますが、実はそんなことはどうでもよかったりもしますw 「どうでもいい」というのは、確認申請はあくまでも書類ベースの審査だということ、そして、それはいくらでもやり直しや変更が利くという理由からです。極端なことを言えば、審査機関の指摘や指示に従って書類や設計図書の補正を続ければ、「必ず」通るわけですw

でも、「建築確認申請」というのはそれだけで完遂するものではないことをご存じでしょうか?いや、たぶん、知ってる「つもり」だと思うんですけど、確認内容が改正されたということは、確認内容に対する「完了検査」も同様であるということを意識している情報発信ってほとんど見受けられません。改正法による確認申請業務で、省エネ適判の義務化などでその対応をします!( ー`дー´)キリッっていう営業案内や、元になる確認申請業務も対応します!( ー`дー´)キリッっていう営業内容はあっても、「完了検査」の立会い代行や、検査資料作成を請け負います!( ー`дー´)キリッなんてのは見たことがありませんw

先ほども書きましたけど、「確認申請」は書類上の審査ですので「直し」が利きます。でも、「完了検査」というのは、やり直しが利かないかといえば、そうではありませんけど、その影響はすさまじいものです。壊してやり直すわけですので、お金も時間もかかります。なので、実質不可能なわけです。

で、何を「検査」されるのか?っていいますと、「確認申請」で審査された項目「全部」なのですwww 大事なことなので、もう一度いいますw 「確認申請で審査された事項全部」ですw 全部ってどれだけか?ってわかりますか? 国土交通省が公開している「改正建築基準法 2階建ての木造一戸建て住宅(軸組構法)等の確認申請・審査マニュアル」には、大変丁寧に審査箇所や審査内容が記載されており、この通り図面作成さえすれば審査が円滑に進むという内容ですが、「完了検査」も同じなわけです。つまり、このマニュアルに記載されている内容を原則「全部」検査するってことなわけです。

ちょっとおさらいしますけど、そもそも、今回の改正基準法の大慌ての問題の根底にあるのは、4号特例という確認申請における審査項目の省略されていた内容が、今回の改正によって審査されるようになったということです。言い換えれば、4号特例で「検査」されなかったものが、改正で「検査」されるようになったというだけのことですが、では、「検査」対応ってできますか?ってことなわけです。はっきり言いますが、4号特例なんか使わない建築物、例えば特殊建築物などの建築を設計したり監理したりの経験がある方なら、「だからなに?」っていうレベルなのですが、これまでも4号特例だからといって監理は省略せず、しっかり検査資料として当たり前に用意していたなら「全く問題はない」のですが、「え?何用意するの?!」ってなれば、それは申請以前の問題になります。

例を挙げます。以下は審査機関、検査機関で対応がかわるかも、なところではありますが、弊社がこれまで受けた完了検査で、4号特例でない場合での対応事例を元にします。

改正基準法の審査マニュアルには、「仕様表」なるものの記載があります。これに何が審査事項としているのか?という部分ですごく丁寧に説明されていますが、例えば審査項目として、

法第37条 建築材料

では、以下のような記載があります。

これは、「指定建築材料」に関する項目ですが、構造的な審査が省略されないとすれば当然見られる項目です。指定建築材料とは建築材料の中でも「工業製品」として加工製造されたものを指し、無等級材などの木材は含みません(これを誤解している人は世の中にたくさんいますw )。

一般的な木造戸建ての場合、この指定建築材料に「絶対あてはまる」のは、コンクリートと鉄筋です(木材については集成材などの工業製品以外は違います)。また、ここでは触れられていませんが、法37条は「主要構造部その他安全上、防火上又は衛生上重要である部分」に対する建築材料の規定ですので、耐力壁面材として使用する「合板」やその他面材、さらに「接合金物」も含まれます。

求められるのはその品質で、法37条の規定では、

①日本産業規格(JIS)又は日本農林規格(JAS)に適合するもの
②国土交通大臣の認定を受けたもの

この2点である必要があります。従って、コンクリートであればそれがJIS規格に準拠しているか、その同等であるという認定が必要になりますが、当たり前に生コンを注文して現場にもってくれば、一般的には「JIS」であるわけですので特段問題はないと思います。が!それが納品された「証」ってもってますか?なわけですw 例えばこんな書類があります。

これ、現場に生コンをもってくれば、ドライバーさんがくれる「納入書」ですが、コンクリートを出した会社として「宇部生コン」の名前と、宇部生コンがJISの認定をとっているというマークも入ってます。ちなみに、これ単なる捨てコンですので呼び強度とか低いですw(なんや、そんなよわっちぃの!とか思わないでくださいw クシャクシャの紙なのは、現場やっててポケットに押し込んだってことでご理解くださいw)

また、鉄筋はどうでしょうか?以下は、鉄筋の「ミルシート」といわれる品質証明書です。

鉄筋は製鉄から鋼棒加工、そして出荷、保管という流れになりますので、在庫品の場合などはそのトレーサビリティができないとダメです。この事例ですと、大谷製鉄が伊藤忠丸紅住商経由で、吉岡幸に卸したという流れがわかります。これに、実際に鉄筋施工した会社の納品書がついて初めて現場に正規ルートで鉄筋が納入されたという証になります。言い換えれば、「鉄筋のミルシートが出ない」場合には、その鉄筋の品質が法定規格をクリアしているか?ということについて、甚だ疑問があると言わざるを得ないってことです。

ここまでが、基礎に関する材料の監理という側面での資料になりますが、コンクリートは現場に運んできて、一定の養生基幹を経て強度がでます。コンクリートの部分の仕様表を拡大しますと、

設計基準強度Fc:24N/mm2以上、スランプ18cm以下って書かれてます。もし、この強度で設計していて、図面にもそれが記載してあれば、その通りの「強度」が出ているか?というものが監理として必要になります。そのためには2段階での処理が必要になります。まずは、どのような生コンクリートを「製作」するのか?という部分です。

これは、「配合計画書」と言われるものです。コンクリートは、セメントと砂利、砂、そして水を混ぜてつくる材料ですので、どこで取ってきた砂を使うのか、砂利を使うのか?という部分での品質計画がかかれます。また、どのくらいの量で混ぜ合わせるのか?という配合も計算された結果がつけられます。さらにこれだけではすみません。

生コンクリートはJIS規格でなければなりませんので、それを構成する成分も一定の品質かJIS規格であることが求められます。もちろん「水」も使いますので、その「水」の品質も見られます。まだ配合して生コンつくってないのにも関わらず、ここまでの品質に関する資料が求められるってわけです。そして、実際に現場で打設されたコンクリートの強度試験が必要になります。これが「コンクリート強度試験」といわれるものです。

現場で納入された生コンを6つの筒状の試験体をつくり、その試験体を実際の現場で硬化していく状況と同等な環境で固まらせて、それを試験機にかけて「潰す」ことで強度を測定します。また、塩化物濃度も計測し、コンクリートの強度に影響がある化学的性質が一定の品質基準に準拠できているか?も検査します。

さて、これらは、「基礎のたった一つの項目での検査」と「検査結果資料」です。たった一つです。設計図書には鉄筋をどのように配置するのか?ということも記載されます。そうなれば実際にそのように施工されたのか?ということを「現場で確認した資料」が必要になります。いわゆる「配筋検査」です。これを例にあげると、「瑕疵保険の検査を受けてるから」というのですが、あれは「保険引受」のための検査であって、建築基準法上の監理項目に対する検査ではありません。なので、瑕疵保険検査に合格してるから、っていうのは「だから?」なわけですwww

このように確認申請の項目が増えるということは、それに付随する現場状況の検査やその記録が必要になるわけで、如何に緩和規定が楽にしてくれていたのか?がわかります。でも、これらの項目は、住宅だけではなく、建物を建築するにあたっては「当たり前に品質管理する所」なわけで、これまでこのようか監理がなされなかったとすれば、それはもはや「監理上の手抜き」でしかありません。まして、それを「やったことがない」という場合には、もはや現場監理という側面では素人と変わりがありません。

国が法律を改正した背景には、こうした緩和規定を盾に本来やるべきことをやらなかった業者がいて、その業者の影響がかなり大きいという判断があったとみるべきなのです。

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