確認申請で指摘事項対策

確認申請を提出して審査を受ける場合、記載ミスも含め何らかの指摘事項が審査機関から連絡されます。まぁ記載ミスや計算ミスはともかく、指摘の内容の大半は、審査機関の法的な解釈とこちらの認識や解釈が違っている場合に、あくまでも「お伺い」という形での指摘となるわけです。簡単に書けば「あんたはこの法文に対しては、こうやって書いてきてるけど、それ、解釈が違うくね?」ってのが「指摘事項」ってことになります。

ここでややこしいのが、「法文解釈」というところで、本来は共通のルールとして存在している「はず」の建築基準法なわけですが、実際の運用となると、個々の現場で固有の状況があったりで、必ずしも文言通りの解釈でよいというわけではないことが出てきます。それを運用レベルでの参考資料としてまとめている図書が発行されてて、意外と審査係はそれがバイブル的存在だったりします。いくつか紹介します。


◎建築物の防火避難規定の解説 2023

建築基準法の運用では「防火避難規定」という部分がかなり難しく、その扱いについてはケースバイケースのときがあります。単に、法文だけで解釈して大丈夫!だと思っても、実際には運用レベルでルールがあったりもします。そういう「扱い方」の参考が書かれている解説書です。建物が耐火・準耐火建築物だったり、防火規制地区での建築の場合、防火避難規定に関しては住宅レベルでもハードルの高いものが要求されます。まぁ、大都会で仕事をされている方なら今更な部分が多いかもですが、特殊建築物などでなければ、それほど防火避難規定を熟知しなくても問題ないので、たまにそういった設計に出くわすと「えw」って感じになる場合がありますw ちなみに5月には2025年版が発刊されるようです。


◎建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 2022年度版

正直、テッパン中のテッパンの資料だと思っています。これを読まない審査係は絶対にいないといわれるくらいのレベルだと思います。例えば、建物には用途ってのがありますが、その用途というのは建築基準法が制定されたときから、さほど追加されていません。カラオケボックスってありますけど、建築基準法上、「カラオケボックス」という用途は定まっておらず、運用レベルで「遊技場」として扱われるというルールを別途設けています。また、「スポーツジム」もジムというカテゴリーでの用途は法的に定まっておらず、原則、「スポーツの練習場」として扱われたり、極々小規模(例えばパーソナルトレーニングで常時一人程度しか相手しないなど)の場合は「学習塾」としての扱いがあったりもします。要するに、法文に明確に書かれていない事柄に対して、どう解釈するのか?どう適用するのか?がこの図書の目的となります。


◎近畿建築行政会議 建築基準法 共通取扱い集 2022 (第2版)

建築基準法の運用は原則として各都道府県の建築主事の判断によるものですが、近畿地区の自治体での共通の取扱い事項をまとめた図書になります。で、実際、このような自治体レベルで取扱いをまとめていて「図書」として発行しているのは、この「近畿建築行政会議」しかないと思います。そのほかは自治体での運用事例をPDFで県庁、市町村役場のホームページで公開しているレベルであって、その実は、これまで挙げた図書の抜粋だったりです。この近畿の取扱い集は、前述の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 2022年度版」で記載されていない、もっと細かな具体的な事例の場合が多く、内容を見ると審査でよく指摘を受けるようなレベルのことが多いのでかなり細かいというか、重箱の隅をつつくレベルの内容であることも確かかもですwww

このような法律の運用上の参考資料は、著名な設計の先生方が書かれている書籍もあるんですが、それはそれで大事ですけど、まずは、行政機関の審査係が必ずと言っていいほど参考にする資料を読み込んでおくことで、彼らがなにを指摘してきてて、何を問題にしているのか?という点を、過去からの運用前例で掴んでおくことが必要だと考えています。役所の対応は「前例主義」ですのでwww

それを知ったうえで、審査係の解釈が間尺に合わないと感じたのであれば、正々堂々と「なんでやねんw」って言えばよいと思います。それを窓口なんかで「なんでアカンのじゃ!」って言い合いになってることをよく見受けるのですが、「このように法律を解釈するとダメなんでわ?」っていう審査係の指摘からなわけですので、「アカンもんはアカン」ってわけですw なので、自分の考えを通したいのであれば「それ、解釈ちがってますよ?」っていう根拠を示すべきなのです。

審査は前例や通達、そしてこの種の行政関係が発行している図書を参考に解釈して審査するわけです。ですので、それを覆すためには、それら資料を解釈の材料として判断していること自体が間違っていると逆指摘するしかありませんし、そのための材料が必要なわけです。

建築が法律に縛られることをナンセンスだと言う方が多いですが、建築行為はなんらかの形で社会的な影響を他者に与えるわけですので、法が存在することは致し方ないことですし、それにちゃんと則することがある一定の秩序をもたらすと思います。したがって、基準法を知ることはたいへん重要なことだと考えています。


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