四分割法は本当にバランス確認になるのか?#1

2025年4月からの法改正で木造戸建て住宅では、これまでの4号特例による法適合審査省略がなくなり、構造関係規定の確認がなされるようになりました。まぁ、正直、「だから何?」って話しなわけですが、これまで特例によって審査省略されたことによって、設計者の中には「設計しなくてもいい」という非常におかしな発想で設計に携わっていた輩もかなり多く、結果として、構造関係規定そのものが無理解だということで、事実上「設計能力がない」という状況が露呈しています。

間取りや外観、室内装飾などのデザイン設計はできても、肝心の建築物としての安全性を設計できないという設計士が今回の法改正に直面するにあたって、国交省は数年前より全国的に研修セミナーを開催し、丁寧なマニュアルを作成し、そのマニュアル通りの設計図書を確認申請時の添付図面として提出することで、そうした「無理解な設計士」でもなんとか確認申請をこなすことができるというレベルまで引き上げようと躍起でしたが、どこまで効果があったのか?は非常に疑問です。

確認審査機関では、そうした「不備」を抱えた審査資料を一つ一つ確認していくことになりますので、当然時間がかかります。これまで7日程度で確認済証を発行できたものが、1か月かかるなんていうのはざらになってきたわけです。当たり前に設計しなければならない内容を、当たり前に審査するだけなのに、それが混乱するのは旧4号建築物に対して設計していたこれまでの対応が、如何に間抜けなものでしかなかったのか?という証明になっているとすら思えます。

さて、今回の法改正では特に追加されている内容ではないですが、筋交いなどの耐力壁の「配置バランス」を検討する「四分割法によるバランス確認」というものがあります。これは2000年の法改正で定まった内容ですが、それまで耐力壁の「量」を規定することはあっても、その「配置」を規定するものがありませんでした。阪神淡路大震災により倒壊被害を受けた家屋の状況を調べると、新耐震基準であっても倒壊が目立ち、その原因として「耐力壁の配置バランス」が注目されたことによります。

ですが、このような法改正が過去にあったにも関わらず、結局、旧4号特例により設計されることが実質ない状態では、設計者がバランスの確認を行ったということを示すものがなければなりませんが、果たして皆さんのお建てになった住宅にはありますでしょうか?意外と平面図と立面図以外手元にないなどという状況ではないでしょうか?

では、「四分割法」にですが、「改正建築基準法 2階建ての木造一戸建て住宅( 軸組構法)等の確認申請・審査マニュアル 2024年11月第3版」を引用してご説明します。

耐力壁の法的な規制の基本的な考え方は実に単純明快です。

面積に対して各種検討を重ねた結果導き出された「係数」を掛けることで最低量(以下、必要量)を決める。

ということで、この必要量に対して、設計上の「存在量」が上回っていることを示すことで安全性を担保するというものです。この面積に対してという部分では、

地震に対しては床面積
風に対しては建物の見付面積(立面面積)

を元になる面積としています。では「四分割法」ですが、これは何を見ているか?といいますと、平面形状を縦、横4等分し、その分割された個別の面積に対して必要量を算出し、その分割されたエリアに存在している量と比較するというものです。以下、テキストで示されている図です。

図中、「上」と「下」というのが建物の横方向(Y方向)の4分割の一つずつで、「左」と「右」が縦方向(X方向)4分割の一つずつです。ここで注意してほしいのが、面積を4分割する(面積を4等分する)のではなく単純に「4つに区切る」だけだということです。画像ではマス目に綺麗に配置された建物ですので、Yが12マス、Xが8マスです。したがって、Yは4マスずつ、Xは2マスずつというのが分割されたラインとなります。

この「上、下、左、右」のエリアの面積から必要量を計算し、その中にどれだけ耐力壁が存在するのか?を算出し、耐力壁の配置に「偏り」がないか?を判断しています。

でも、この計算結果の表をよくみますと、例えば、上と下で同じ充足率ではありません。面積が違うわけですし、壁の配置も違うわけですので、一致することはまずないわけです。例えば、上の充足率が1.8で、下の充足率が0.9であれば、下は必要量に満たないわけですのでNGなわけですが、NGであれば、上と下の比を計算し、その比が0.5以上であればOKというのが計算上のルールなわけです。

例の上が1.8で下が0.8であれば、その比は0.5となりますので、バランスの確認としてOKとなるんですが、冷静にこの数値をみれば、上は必要量の8割も多く、下は必要量の2割少ないという状況ですので、計算上はバランスがよいとできたとしても、設計上の「感覚」からはまずいのでは?という印象があるわけです。上側に偏った耐力壁の配置であるという状況なのです。

また、平面形状を4等分したわけですが、この画像事例のように「ほぼ四角」の形状であれば単純に4分割してもよさそうですが、ごちゃごちゃした形状だとしたら同じような分割法で問題ないでしょうか?

この話しは次回にしたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました