洗面化粧台をつけると固定資産税が高くなる?
先日、お客様よりこのような質問がございました。
「固定資産税が高くなるらしいので、洗面化粧台をやめて天板に洗面器をつけるものにしたほうがよいですか?」
というものでした。その情報の出所がネットだったようで、たまたま洗面化粧台をどのようにしようかと色々と情報を探っていたら、そのような情報に出くわしたという感じでいらっしゃいました。まず、結論から申し上げますが、「洗面化粧台」と「天板に洗面器を載せた場合」の、その設備に対する評価額は「洗面化粧台」のほうが高くなります。よって、情報としては間違ってはおりません。
ですが、固定資産税の「税額」が決定する仕組みについてを理解していると、このような「○○を選択すると固定資産税が高くなる」という思考が如何に無駄であるかがわかります。今日は、その解説をしたいと思います。
固定資産税の税額が決まるまでの仕組み
まず、固定資産税の税額が決まる過程の説明からいたします(固定資産税は地方税ですので、あくまでも一般的な評価過程であるということを先に申し上げておきます)。固定資産税は、以下のような形態でその税額を決めるための「評価額」というものを決定します。
評価額は、(評点数)×(評点一点当たりの価額)ですが、ここで重要なのは、「再建築費評価点数」といわれるものです。この「再建築費評価点数」というのは、建物を再度建築するとどの程度の価格になるのか?ということをある程度調査された金額をベースに、延床面積や建築面積などから単純計算で割り出すことができるような一覧表から算出されるものです。以下、あくまでも一例ですが、総務省のホームページで公開されている資料を示します。
例えば、屋根瓦で、瓦の面積が120㎡だとすると、瓦(中程度)のものだと、
15,690×120=1,882,800(点)
となります(あえて、この段階では評価点数なので単位を「点」にしておきます)。このように、建物各部分の面積按分された単評点に実際の面積をかけて評価点数を算出し、その全ての評価点数を合計したものが「評点数」となります。さて、ここで、弊社のお客様が悩んだ「洗面化粧台」の部分の扱いはどうなのか?を見て見ましょう。
洗面化粧台と洗面器の評価の差は?
洗面化粧台などの設備も1点あたりの評価点数が公開されています。
この表を見ますと、確かに、洗面器が44,600点、洗面化粧台が62,730点ですので、評価点数としては洗面化粧台が高いということになりますし、実際に評価額としては評価点によるわけですので、その他の部分がすべて同じだと仮定した場合、18,130点確実に高くなります。もちろん、その化粧台や洗面器が中程度のものと判断できない場合は、表中に記載の補正がかかりますので、仮に、最高級品であった場合には、洗面器で66,900点、洗面化粧台で125,460点となりますので、その差は58,560点となり大きくなります。これだけ見るとなんだか固定資産税がすごく高くなるような印象ですね(笑)。
評価額と税額は違う
この問題の最終点はなにか?というと「税金が高くなる」だったはずですよね? では、全く同じ仕様で単純に洗面化粧台か洗面器なのか?を比較したとしたら、評価点数は、洗面化粧台の方が中程度で18,130点、最高級品の場合で58,560点の差でした。では、税額がどうなんでしょうか?さて、いよいよ評点が円に変わります。ココから先は話しを簡略化するために、単純に洗面化粧台と洗面器だけの比較でお話しします(あとはずべて同じですので)。評価額は、
評価額=(評点数)×(評点一点当たりの価額)
でしたよね? すると、重要なのは、「評点一点当たりの価格」なわけですが、これはおおよそ「1円」です。もちろん、地域性によって物価指数などで補正がかけられますが、それが極端な補正にはなりません。単純にするために補正が1.0であったとすると、評点数がそのまま評価額になりますので、洗面化粧台と洗面器の「評価額の差」は、18,130円~58,560円となります。ただし、これは評価額でしかないので税額ではありません。
税額の算出は、自治体によって税率が違っていたり、その税率に補正率をかけていますが、原則1.4%です。ということは、税額の差は、254円~820円ということになります。これ、悩むレベルの税額なんでしょうか? さらに、この評価額は新築引渡時の初年度の評価です。建物の固定資産評価は経年劣化をみてますので目減りしていきます。
この表は、経年減点補正率の表ですが、例えば120㎡、2,500万の住宅ですと一番右欄になりますので、5年で67%となります。つまり、先ほどの洗面化粧台が仮に最高級品だったとして、税額の差は500円程度の差になっていきます。
まとめ
固定資産税を気にしての家づくりは、はっきり言って「ナンセンス」です。もしどうしても固定資産税を気にし、評価を下げたいというのであれば、できるだけこじんまりと作り、かつ、設備品などは一切付けないくらいのレベルで考えないと無理です。なるほど税金を考慮したというのは、そういう意味では一つの知識としてはよいのかもしれませんが、実際にどこまで差が出るのか?ということまで突き詰めた場合、それが許容できるかできないを真剣に考えるレベルではありません。従って、まずは、どう暮らしたいか、どう生活したいか、どこまで利便性を求めるのか、といった希望を叶える建築計画にすべきなのです。