耐震診断で建物を調査にいくときの作業の大半は、図面復元のための間取りの寸法になるんですが、間取りを計測するのに、実際に柱が見えるような「真壁づくり」という形態であれば、それなりに楽なのですが、洋間などのような柱が隠れている「大壁づくり」となりますと、壁の中の状況が目視ではわからないので、壁を少々叩いて音を聞いたり、あるいは、コンセントやスイッチが付いている箇所から類推することがあるんですが、その際に重要な考え方が、「グリッド配置」という考え方になります。
一般的に、間取りを考える上では、碁盤のマス目のような状態に対して、どのマス目をいくつとって部屋にするという考え方なわけですが、この時の碁盤のマス目をグリッドという言い方をしています。問題になるのは、そのグリッドの間隔で、この間隔が直接柱位置に関係してくるといっても過言ではありません。
これは手書きの調査結果なのですが、柱の位置がわかるところは、その位置の寸法をとっていくのですが、一般的に、この碁盤のマス目、つまりグリッド寸法を、910mmとか940mmとか970mmとかに想定することが多いのですが、実はこれは、昔ながらなの「尺貫法」というものから割り出される大きさなのです。そして、尺貫法の長さの単位とは、厘、分、寸、尺、間、町、里という単位で示されるのですが、
10厘=1分
10分=1寸
10寸=1尺
6尺=1間
60間=1町
36間=1里
といった形でくりあがっていきます。以下の画像は、大工さんが使う「差し金」といわれる定規ですが、現在でも尺貫法記載の差し金が現役で使われています。
ちなみに、画像は市販の差し金ですが、これよくみると、最小のメモリは「5厘」です。尺貫法による長さを現在のメートル法に換算してみますと、
1厘=約0.30303mm
1分=約3.0303mm
1寸=約30.303mm
1尺=約303.03mm
1間=約1818.18mm
といった数値になっていきます。「約」と書いてあるのは、小数点以下できっちりと合致しているわけではないということからです。そして差し金での最小メモリは5厘ですので、約1.5mm程度まではきっちり読めるわけです(実は、2.5厘までは目視できますので、0.7mmまでは計測できますwww)。そして、先ほどの一般的なグリッド寸法にあてはめると、
3尺 ≒ 910
3尺2寸 ≒ 940
3尺3寸 ≒ 970
6尺 ≒ 1820
といった形で近似値としているわけです。建材の規定寸法が、910×1820というものが多いのは、昔ながらの建築の定尺が、3尺×6尺を中心としているためです。
さて、図面復元のときには、柱が見えているところをメジャーなどで計測するわけなんですが、以下の画像の赤丸のところをご覧ください。
計測したら、3653mmということです。このとき計測幅は柱の内法を計測しています。この寸法を尺貫法に直すと、
3653÷30.3(寸)=120.5610561(寸)
となります。つまり、おおよそ、「12尺」となるわけですが、この寸法が図面復元を行う上でかなり重要な数値となってきます。次回は、この「12尺が持つ意味」を掘り下げて説明したいと思います。
※尺貫法に関する詳しい単位換算は、以下のサイトをご参照ください。