エレベーターは贅沢品なのか?

ホームエレベーターを採用した住宅事例を紹介すると、「エレベーターなんかすごい価格がするから採用しない!」という話しは、ある意味、一般的だとおもいます。しかし狭い敷地で1階面積があまり広く取れず、結果として上階へ伸ばしていかなければならないような間取りの計画になる場合、エレベーター設置は意外と間取りの構成を楽にする設備になります。特に、狭小地に、高齢者をはじめとする「歩行に難がある」方のお住まいを計画する場合には、エレベーターの設置というのは一度検討してみるだけの価値は出てきます。これを私どもでは、「縦方向のバリアフリー化」として提案しています。

上階へのアクセスを階段のみとすると、階段の上り下りが必要になり、ADLが低下してくれば上階に移動することはほとんどなくなります。一般的な住宅で、高齢者だけが暮らす住宅では、2階が物置同然になるというのは、2階への上り下りが苦痛であるからです。1階に抜本的な間取りが構成できれば、2階は使わないという選択肢でも構いませんが、狭小地では上階も必要な部屋として、たとえ体に不都合があっても使わないわけにはいかないということになりかねません。

そこで、「縦方向のバリアフリー化」を実現するためにエレベーターを設置すると、上階への移動はほとんど苦にならない環境をつくることができます。以下に事例を示します。

画像中、緑のラインが生活動線です。1階には寝室とトイレ、その他収納があるのと、ビルトインガレージで構成しています。ガレージは必須でしたので、1階にとれる間取りは車のスペースを差し引くとかなり狭いスペースになります。そこで、1階は「就寝」のみのスペースと割り切って、2階にメインの生活ステージを計画しました。

注意点は、エレベーターを付けるからといって階段をつけないということはできないということです。これは非常時の避難路にもなるためです。また、エレベーターが停電などで止まり、閉じ込められた場合にも外部と連絡が取れるような措置が必要です。

また、エレベーターを計画する際に、その配置を建物中央にくるように計画しますと、このエレベーター区画がそのまま構造的に「芯棒」のようなコアを作るような形態もできあがります。少なくとも3方を耐力壁とすることができますので、建物重心位置付近に耐力壁の剛芯がくるようになりますので、安定した構造を計画できるというメリットもでてきます。

今回の事例のエレベーターの価格は、設置費も含め、250万くらいです。これを高コストと考えるかどうかは、間取りの構成と生活レベルでの利便性を天秤にかけることになりますが、狭小地で面積的に土地代が安くつくのであればその分でペイできる費用として考えることは可能ではないか?と思います。

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