屋根軽量化の続き

先日ブログでテーマにしました「屋根の軽量化と耐震化」ですが、本日、2階の屋根の施工を行いました。

ちょっとショッキングな画像をお見せしますが、先日のブログで野地板の厚みが6mm程度という書き方をしましたが、実はもっと薄かったのです。

画像の右の方をご覧いただきますと、穴が開いているのがお分かりになるかと思います。実はこの穴は、今回の瓦下ろしの施工作業の際に「踏み抜いた」穴です。屋根垂木の間は野地板で保たれているだけですので、たまたま脚を垂木にかけずに野地板にかかった際に、ざっくりと踏み抜いたとい状況です。実際の厚みは、6mm切っている「荒板」で、節のあるような部分ですと極端に弱いです。

そして野地板が薄くても瓦屋根の構造としては意に介さないのは、瓦の施工方法に理由があります。

古い建物瓦の固定方法は、野地板の上に下葺き防水紙があり、その上に等間隔で桟木(瓦桟)を取付け、その桟に瓦をひっかけていくというものです。この方法を桟瓦といい一般的な施工方法になっています。もっと古い方法ですと、「葺土」といって野地板の上に土を載せ、瓦を重ねていくという方法があります。瓦屋根での耐震診断で葺土ありというのはこの手法での施工になります。

三州瓦の愛知県陶器瓦工業組合公式サイト 瓦WEBより

桟瓦に話しをもどしますが、この桟に瓦を留める際、以前は「銅線」で括り付けていただけで、風などで簡単に外れたり、雪の重みでずれたりすることが多く、現在では「釘止め」が主流になっています。つまり、和瓦屋根の場合、野地板の存在意義は、下葺き防水する際のシート状の防水紙(昔はアスファルトフェルト)が張るためのものであって、桟を打つための施工ができればかまわないというレベルでの認識しかなかったわけです。

近年では、屋根の野地板を強化することで、水平構面を構成させるなど、野地板自体に構造耐力を持たせるという考え方が「普通」になってますので、それなりの厚みでそれなりの釘のピッチで施工されますが、こういった考え方がほとんどなかった昭和から平成一桁台までくらいですと、粗末な野地板を使っていることが多いです。瓦が載ってしまえば、見た目の重厚感がでますので、如何にも丈夫な屋根というイメージを与えるわけで、まさか、薄い野地板で施工されているなんてお客様自体も思ってもみないでしょう。

以前のブログテーマでは、1階の屋根(下屋)の部分でしたが、ガルバリウム鋼板AT式によりしっかり葺き上がりました。

そして、本日、2階の屋根(本屋)の葺き替えを行いました。

現場の職人さんたちは、下屋での経験でこの建物の状況を理解しているので、今回は踏み抜きなどの事故はなかったですw 2時間程度で瓦下ろしも完了し、桟木の撤去も完了。そのままの流れで、既存野地板の上に、12mmの構造用合板を張っていきました。

和瓦から金属屋根への変更では、重量としてはおおよそ60%程度重量を低減できます。ここまで軽量化されると耐震性の部分では相当な影響が期待できます。ただし、繰り返しになりますが、瓦屋根には瓦屋根のメリットがありますので、本来は重量がある屋根としてしっかりと構造計画を立てればよいだけのこと。

むしろ屋根を軽量化しなければ耐震性が担保されないというのは、そもそも当初設計が非常に悪い、はっきり言えば、屋根重量をちゃんと加味した設計をしていないわけですので、「設計の手抜き」とすら言うことができます。これは建物が古いとか新しいの問題ではありません。

古い戸建て住宅は、建設当時のお客様の思いとしては、今の住宅ローンを組めば建築できるとか、建売住宅を購入するというような「お気軽感」はなく、それこそ、一世一代の決断だったはずです。それをちゃんと設計という部分で提案できていないというのが、他のブログテーマでも取り上げたように、「4号特例」という闇があったからだと思います。

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