耐震診断を行う際に、天井裏などから調べて、筋交いの頭が柱間で左右に見えれば、とりあえず筋交いがたすき掛けでダブルで入っているという認識ができますが、壁を壊してみると、そのたすき掛けの筋交いがとんでもないことになってたりします。
以下の画像は、筋交いがたすき掛けではいっているとされる箇所の壁を解体してみた結果です。
この画像に違和感を感じませんか?たしかに、筋交いはたすき掛けでダブルにはいってますが、よーく見ると、一方の筋交いに切り欠きをしてたすき掛けにしてあります。この方式は、現在でも、真壁造りのときには採用する入れ方ですが、解体前の画像を見てもわかるとおり、普通に大壁ですので、少なくとも柱の幅分は壁としてつかえる隙間があるわけですの、筋交いを切り欠くような細工は必要ありません。
ですが、この場合、下屋の小屋束が筋交いが取り付く面にあるために、筋交いを切り欠く必要があったわけですが、この原因は、下屋の屋根構造が「間崩れ」していることも影響されています。この場合、下屋の屋根構造をしっかりグリッドにのせるような構造計画をすれば、以下の画像のような赤線の位置に、柱や筋交いを設置することで、小屋束を省略し、柱に母屋(緑の○の位置)がとりつくような納まりを施せば、筋交いを切り欠くような細工は必要ありません。
さて、こうなると、この筋交いは、切り欠き箇所に補強をしない限り、有効な筋交いとして認めるわけにはいきません。切り欠き箇所に平金物などをつかって補強が必要になります。
これは、和室真壁に筋交いをたすき掛けにした施工例ですが、切り欠きの「両面」に金物補強をほどこしています。したがって、今回、見つけた箇所のたすき掛けの筋交いは、このままでは裏側の金物が取り付きませんので、「入れ替え」となります。
こういう場合に、金物の性能で回避できる場合もあります。金物メーカーの岡部株式会社が販売している「ブレスターX」というのは、45mmまでの筋交いであれば、専用の筋交い端部金物(ブレスターZ600)を併用することで、片面だけでたすき掛けの筋交いの補強を可能としています。
ですが、筋交い金物(ブレスターZ600)の設置を内使いにする場合には、ビス施工を筋交い設置前に行う必要があるため、結果として、今回の場合には、一旦筋交いを外すことになりますので、それであれば、外側の平金物をつけた状態で、差し込み設置して、正面から、再度、金物施工することでも対応できちゃいますので、意外と利用箇所は限られるかなという感じです。