木造建築物の防・耐火設計

「防・耐火設計」なんていうと、構造と並んで、なんか小難しいことを設計していくんじゃね?っていうイメージがあるかもしれませんが、そもそも、木造建築物の弱点とは、構造材である「木材」自体が可燃性のものであるということで、構造的に地震や積載荷重などが作用して倒れないことも重要ですが、それよりも発生可能性が高い「火災」への対策も重要なわけです。特に、不特定多数の人が利用する施設などで、最上階にいる人が確実に避難できるまでの時間を「かせぐ」ために、一定時間、燃え広がらない、燃え移らないことが必要になります。これらを検討し、どのように施工すべきか?ということを設計することを「防・耐火設計」といいます。

木造建築の多くは、住宅だったり、小規模な店舗、事務所だったりなわけですが、昨今、木造建築で、ビル、マンション、学校などの中大規模の施設建築が多くなってきましたが、構造的なクリアについてはある程度、金物などを併用することで十分な耐力設計ができていますが、火災に対する「防火、耐火」という側面では、法律の壁などもあって、なかなかクリアできていませんでした。ところが、カーボンニュートラル社会の実現など環境対応型の建築が叫ばれるようになって、2018年に抜本的な防・耐火基準の合理化という側面で、様々な緩和規定が建築基準法に盛り込まれました。このことにより、クリアが難しかった施設建築でも木造化できるようになりました。

ですが、合理化といっても、まだまだ、その内容は細かく、根拠条文だけでは具体的な設計をどうしたらよいのか?という部分で理解するのには難点ばかりです。そこで、令和6年1月に、これまで施行されている防・耐火関連の法令に準拠している「図解 木造建築物の防・耐火設計の手引き」が、日本住宅・木材技術センターより発刊されたこと契機に、その講習会がWEBで開催されています。

実は、この発刊の前に、2016年に「図解 木造住宅・建築物の防・耐火設計の手引き」というものが、同じ、日本住宅・木材技術センターから発刊され、同様に、セミナーも開催されていました。

先ほども書きましたが、防・耐火に関する設計は、特に、不特定多数が利用する建物においては重視されるわけですが、そのほかにも「高さ」が高い建物、具体的には、階数が多くなればなるほど、高度な防・耐火性能を求められます。また、隣地への延焼を防ぐということも求められるわけで、この点においては、住宅も非住宅もなく、規定の防・耐火性能を求められることになります。

また、防・耐火基準というのは、建築基準法による縛りだけではなく、「消防法」の規制にも関係してくる部分があります。そして、この消防法での規制においては、建築基準法での縛りとはくらべものにならないくらいの規制を受けます。ちなみに、建築基準法では法規制が改正された場合、遡及を受けませんが、消防法は、過去にさかのぼって遡及をうけますので、昔の法律で是であっても、現行法で非となれば、是正措置をとらされます。

それほど、火災に対するリスクというのは、発生確率は地震とは比べものにならない確率があるわけで、それが外界からの影響だけではなく、室内での失火という側面も常に存在しているので、もしかすると、重要度は耐震よりも高いかもしれません。安心、安全な建物づくりという側面では、防・耐火設計は、たとえそれが住宅などの小規模建築においても、重要であることは否めません。

ちなみに、福井県における、防・耐火上の規制は、県条例により、

○建築基準法第22条の規定による区域 昭和47年4月21日福井県告示第401号

建築基準法第22条の規定による区域(昭和30年福井県告示第110号)の全部を次のように改正する。
建築基準法第22条第1項の規定による区域として、都市計画法(昭和43年法律第100号)第8条第1項第1号に掲げる用途地域として定められた区域から、同項第5号に掲げる防火地域および準防火地域として定められた区域を除いた区域を指定する。

と定められていますので、用途地域の指定のある箇所は、防火地域、準防火地域を除き、全域、法22条区域として指定されています。したがって、敷地境界から1階においては3m、2階においては5mのエリアは、すべて防火構造(30分防火性能)とすることが求められます。このエリアというのは主として外壁面、屋根面、軒裏面を指しますが、天井うらの外壁面も規制の対象になります。

防火性能の認定は、外壁面及び室内面の両面になんらかの措置を取った形で認定を受けていますので、外壁面だけ指定の仕上げになっていても、室内側、つまり天井裏の外壁面にも指定された仕様で措置をして初めて性能を認められることになります。この天井裏への防火措置については、一般的な住宅においても同様に求められますので、実は注意が必要なのですが、意外と施工されていない事例が多いです。

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