その2ですwww
金物の話しですが、金物をなんでつけるか?ってったら、柱が土台や梁から引き抜かれるのを防ぐってためなんですが、強烈な金物を取り付けて、ビスを打ちまくれば実験データから想定した力での引抜までは耐えられるというわけです。ではなぜこんなに強烈な金物がほしくなるか?って言えば、それは単に耐力壁となる部分の水平力に対応する能力が、これまた強烈に高めることができるからなわけです。

以前のブログテーマでも使った画像ですが、筋交いなどは地震で横から加わる力(水平力)に対抗するために、いわゆる「つっかえ棒」の役割を担いますが、その時には、図に示すような力が柱や筋交い、梁にかかってきます。
図からもわかるように、水平力がデカくなってくると、筋交いの上端が取り付いている柱の根本が引き抜かれるような挙動を起こします。耐力壁は、柱、横架材(土台)、筋交い又は面材で構成された「壁」で、その壁自体はほかの壁に比べて変形しないことで力しっかりと受け止めてくれてるわけですので、柱が引き抜かれてしまったら、その壁は単なる間仕切り壁でしかなく、抜けた瞬間から壊れていきます。
木造の建築物の耐震性は、この耐力壁が大きな地震力を受けても最後まで壊れないことを想定して設計していますので、柱が引き抜かれたら壊れちゃうような壁を耐力壁とすることはできないわけです。なので、どの程度の力が加わるのかを計算して、それに対応する「補強」を金物で行うということになるわけです。強い金物さえつければ、強烈な引抜力を柱と土台や梁が受けても壁が壊れないっていうすごく便利なものですw
でも、2階の床の梁と2階の屋根の梁の間の耐力壁なら金物が最後まで効き目があるとは思いますが、1階の場合はどうでしょうか?1階の壁って一般的な作られ方としては、こんな感じじゃないでしょうか?


基礎の立上り部分があって、土台がアンカーボルトで留め付けられていて、がっちり壁が基礎と一体となるようにしてますよね?つまり、耐震性を担保するためには、基礎と1階の壁がしっかり緊結されていることが重要なわけですが、その役目をになっているのが「アンカーボルト」なわけです。
アンカーボルトはなんのために入れるの?っていう問いに、「土台を基礎からずらさないため」とか平気でおっしゃる方がおられるんですが、全然違いますw 「アンカーボルトは基礎と土台を緊結して一体とするため」に必要なのです。極端なことを言えば、木造建物の1階の耐震性というのは、この「アンカーボルト」の働きによって成り立っていると言えます。
では、柱の金物に話しをもどしますw まずは以下の画像をご覧くださいませ。いつもお世話になっております「福井コンピュータアーキテクト」さんのソフトのQ&Aにちょうどいい画像があったので拝借いたしますw
すごく具体的な力の流れが紹介されてますが、柱が引き抜かれたときに柱の根本につけた金物はその耐力の限界までがんばります。でもそれはあくまでも「土台と柱脚」の部分の話しです。では土台を基礎と緊結している「アンカーボルト」についてはどうなんでしょうか?
この壁が耐力壁として最後まで頑張るためには、土台が基礎から外れてしまうことがないようにしなければなりません。もし、土台が基礎から外れるようなことになりますとどうなるか?といえば、もう一つ下の画像でちょっと書いてみましたw へたくそですみません><
なんと柱脚と土台は外れないけれども、土台と基礎を繋ぎとめている「アンカーボルト」が引き抜かれてしまい、土台が曲がるということがおこるわけです。これを防ぐためには、「アンカーボルトの引抜検定」という構造計算を行わない限り安全性を示すことはできません。
この話しをすると、必ずといっていいほど、アンカーボルトの埋め込み長さや太さなどはフラット35や瑕疵保険の設計仕様などで250mm以上となっているから250mm埋まってれば大丈夫じゃないの?ダメなの?とおっしゃる方がいます。
はい。それは、あくまでも、フラット35などが「設計仕様」として公表している埋め込み長さでしかありません。一般的な引抜力に対応する場合に問題がないだろうといわれる埋め込み長さでしかありません。もちろん、一般的な引抜力対応するだけであればこの程度の埋め込み長さで問題はありません。ですが、埋め込み長さ自体の法的な仕様規定はどこにも存在しません。「その1」でもお示ししたこの告示の表を思い出してください。

この告示の表の(と)から(ぬ)を見ますと、(と)からは「横架材(土台を除く)。」との記載があります。これが意味することが、この「アンカーボルトの引抜」に法的な仕様規定だけどそれなりに担保させてるということなのです。建築基準法を最低の基準だとディスる前に、こうした細かいところの部分をちゃんと理解しているのか?っていうのを今一度省みてほしいところです。
つまり、(と)が要求されるレベル、具体的には以下の表を参照してほしいのですが、

(と)の15kN以上の必要耐力に対応できる金物を、土台で留めるというのは告示の仕様規定では禁止されているということなのです。言い換えますと、アンカーボルトの引抜検定をしていない設計で、当たり前にアンカーボルトの施工を指示している「だけ」であれば、15kNなどという強烈な引抜力をアンカーボルトと土台で受け持たせるなんてことは、少なくとも仕様規定の範疇では重大な欠陥をもたらすということがわかっているから告示に示しているのです。
例えば、TANAKAさんが発売している「オメガコーナー15kN」などを土台に使うということは、仕様規定の範疇では「NG」なわけです(念を押しますが仕様規定の範疇ではです)。

では、(へ)であれば問題ないのでしょうか?TANAKAさんの「シナーコーナー」は10kNに対応できる便利な金物です。耐震改修などでも多用するかもしれませんが、告示の仕様には「土台を除く」の記載はなく、横架材に対して作用する金物でよいことになってます。なので、10kNを要求される引抜力に対抗する金物を土台においてもこの「シナーコーナー」を使う方が多いとは思いますが・・・・・

なんでこれを話題にあげてくるか?といえば、ヤバいことがあるからなわけですが、それはアンカーボルトの引抜検定を日常的に行っているからこそ触れることができる話題なのです。次回その3ではその理由をお話しします。