MEGAQUAKE 巨大地震 “軟弱地盤” 新たな脅威

9月1日夜9時から、NHKスペシャルで「MEGAQUAKE 巨大地震 “軟弱地盤” 新たな脅威」と題しまして、能登地震の被害を詳細に解析した結果に基づき、軟弱地盤における地震被害拡大についての特集番組が放送されました。

大きく取り上げられたのは、ビルが倒壊し、隣の木造家屋を押しつぶしてしまった建物に関することですが、今回の能登地震での大きな特徴でもある「軟弱地盤」での地震被害が、想定しているものよりも巨大であったことを現地調査を元にしたデータにより、破壊に至る構造の変化をつぶさに解析した結果を取り上げています。

番組の中で結論付けられている内容として、被害が広がった能登地域の大半が「軟弱地盤」であったことと、軟弱地盤における地震の揺れは何倍にも増幅されることで、法的な耐震基準に準拠していたとしても、想定される揺れの強さが強いため、法律で考えられている以上の揺れによる力が作用しているという現実が述べられています。私も、杭が抜け、ビルが横倒しになっている姿を見た時には、日頃設計を行っている者として到底信じられない光景でした。

番組中でも取り上げられていますが、軟弱地盤(番組中ではプリンと羊羹を比較してましたが)の上の建物に作用する揺れの増幅具合が相当な大きさであったことと、破壊過程が柱や梁などの上部構造という建物自体の破壊から始まるのではなく、杭の損傷や、杭と建物の緊結が外れている実態について触れられていました。

以下の画像は実際の杭施工から柱への施工の流れです。

地盤面に深く刺さった杭(この画像の場合30mの杭です)の頭の部分に「NPCアンカー」といわれる部材が取り付けられ、それを囲むように柱を受けるための基礎がつくられ、その上に柱が載るという形です。能登地震でのビル倒壊では、最初の杭と基礎が一体となる部分から引き抜かれてしまったわけです。

杭の設計では、もちろん耐震上の揺れに対する抵抗はもちろん、引き抜かれたり横方向に引き裂かれたりしないように杭頭処理の設計も行いますが、これらのベースになる地盤調査は、「ボーリング調査」により綿密に行われるのが今の常識です。確かに古い建物ではこの地盤評価が芳しくなかった可能性はあるものの、それが番組中に取り上げられるほどの被害状況を発生させるということはおそらく担当した設計者は想像もしていなかったのでは?と思います(番組中でも研究者の方が衝撃を隠せない表情だったことがそれをあらわしています)。

災害に対する備えという部分で、設計で出来る安全性の確保というのは、現状ではそれなりの評価基準などもあり、おそらく、損傷はしても倒壊はしないであろうと想定されるレベルであることは間違いないのですが、今回の能登地震での災害での「軟弱地盤」という視点を加味したときに、その影響は今の法律や設計手法で考えられているものよりも「相当影響が大きい」ことを今回の災害の「教訓」にすべきです。

そして、対策ができる地盤の深さには限界があるということも知っておかなければなりません。番組中に取り上げられた「軟弱地盤」はその深さが数メートルレベルではなく、50、100、またそれ以上の深さを指します。表層10m程度を改良や杭基礎を用いたとしても、それはあくまでも建物の荷重を受け沈降しない程度の対策でしかありません。番組をみて感じたのは、軟弱地盤のところでの建築では、上部構造と言われる部分の耐震性の強化はやはり必須だということです。

「倒壊しない」これは最後の最後まで建物に求められる「性能」だと思います。見逃された方は是非ご覧になられることおすすめします。

◎[NHKスペシャル] 首都直下地震への警鐘 能登半島地震で見えた地下のリスク
 MEGAQUAKE 巨大地震 “軟弱地盤” 新たな脅威 NHK
 5分ダイジェスト


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