設計業務の報酬を受けることができない建築士

以前、ブログでも取り上げましたが、建築士事務所登録を行わず設計事務所を名乗るようなところが問題だということに触れました。

たぶん一般の方にとって「建築士」のイメージというのは、建築の専門家で、設計ができる人という認識だと思います。また、結構、合格率の低い資格試験でそれを突破して資格を取得したということでの評価も高いかもしれません。普通に考えれば、そのような能力を持ち合わせてる人ですから、安心して間取りの相談とか設計そのものをお任せするということは「当たり前」に感じると思います。

ところが、世の中には、

 「建築士ではあるが、対価を得て設計を行うことができない建築士」

が存在していることを知らない方がかなり多くおられます。資格試験に合格して建築士資格を取得しているにも関わらず、お客様から対価をいただいて設計することができない建築士とは、

 「その建築士が事務所登録している設計事務所に勤務されていない」
 「その建築士が設計事務所を名乗っていてもその事務所が事務所登録されていない」

という状況にある建築士を指します。これを「無登録事務所問題」と言っています。ちなみに、この問題の法的根拠は以下の通りです。

建築士法 第二十三条の十

(無登録業務の禁止)
第二十三条の十 建築士は、第二十三条の三第一項の規定による登録を受けないで、他人の求めに応じ報酬を得て、設計等を業として行つてはならない。

2 何人も、第二十三条の三第一項の規定による登録を受けないで、建築士を使用して、他人の求めに応じ報酬を得て、設計等を業として行つてはならない。

さらに、罰則規定もございます。

建築士法 第三十七条

第三十七条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

九 第二十三条の十第一項又は第二項の規定に違反したとき。

ざっくりとした表現をしますと、○○建築士事務所として公的登録を受けている設計事務所に所属建築士として登録している建築士でなければ、「業務報酬」を得てはいけないという決まりなわけです。○○建築士事務所という登録がなされていなければ、当然、先のブログでも取り上げたような「増改築等工事証明書」の発行もできません。

ちなみに建築士事務所登録がなされているかどうかは、以下の検索システムから調べることができます。

◎建築士名簿・建築士事務所登録簿閲覧システム

このサイトでは、建築士と建築士事務所の検索できます。「建築士」としてなりすましていないかどうかも、このサイトでは確認ができますwww では問題の事務所登録ですが、このサイトで弊社を検索しますとこんな感じでデータがでてきます。

登録年月日は直近の更新日となっています。なお弊社は、い番の137号ですので、県内でも相当古い部類の設計事務所となります。

例えば、今、間取りや設計の相談をしている建築関連の業者が、この事務所登録の検索でヒットしてこないとなりますと、個人であれ法人であれ、少なくともその相談のための対価、いわゆる設計料を請求されたとしても、それ自体が法的に違反だということです。

さて、本来、設計業務というのは実は一人でなんでもこなせるというわけではありません。できること、できないこと、できても深堀りできないこと、それは建築士とはいえ日頃から専門業務としておこなっている「領域」に違いがあるからです。例えば意匠性や機能性などの計画に強い専門性を有している建築士、あるいは構造に関する知見が深い建築士、設備などに詳しい建築士、いろいろなパターンがあります。したがって、一人の建築士ではより最適化された設計成果が得られないと判断すれば、各方面に部分的にでも応援を依頼することは日常的にあります。

でも、たった一つ、必ず守らなければならないルールがあるのです。それは、最終的な責任はだれが持つのか?これをはっきりさせることなのです。この役割になるのが事務所登録している設計事務所であり、所属建築士であるわけです。そしてお客様からはその責任に応じた対価をいただく、これが本来あるべき姿なのです。これを以下のように表現してみました。

資格の層(士法3条系): この規模の建物を設計できるのは誰か
登録の層(士法23条): 報酬を得て業として行い、責任を負えるのは誰か
許可の層(建設業法): 施工を請け負えるのは誰か
知見の層(法規制外): 専門的助言は誰でもできる — ただし上の3層の代替にはならない

極端なことを言えば、無資格者でも無登録者でも、その人に能力があり経験もあると認識できるのであれば、責任の所在をこの上の3層がしっかり持てばよいだけの話しなのです。ところが現実的には、4つ目の層が独り歩きすることが多いのです。そして、最終的にはお客様の不利益につながるというわけです。

またこれは、増改築等工事証明書に関するような書類上の問題だけにとどまりません。最近ではSNS等で打合せ中の間取りの添削やアドバイスを求める一般の方が非常に多くなっています。情報を得る道具として優秀なSNSですが、一見、便利そうで実は大きな落とし穴があります。そして中には低額な料金で設計を評価します、といった内容の投稿もチラホラみかけます。大きなお金を動かす初めての買い物でとても神経質になっていることは十分に理解できますが、それほど大きな買い物をするための判断を数千円から1万円程度で正確な評価ができるのでしょうか?

一般のお客様の不安につけこみ、何の責任も持たないで口先だけで設計のアドバイスをするというのは非常に危険な話しです。設計の良し悪しはある程度存在しますが、設計そのものには、いろんな条件や、これまでのお客様との話しあい、お客様の嗜好の内容など様々な観点から総合的に組みあがっていくものが多いはずです。

教科書的には否定的な間取りや構造でも、絶対にダメ、危険であるということがなければ、善後策を講じた上で計画するというのは、設計業務では一般的にあることです。ところがこの手のSNSでの添削では、その部分をすっ飛ばした上で「これはダメです。あれは危険です。」という指摘をしがちです。本当に心配であれば、まずは、設計を依頼しているところと相談をすべきなのです。そして、全般的に重要なのは、

あなたが相談している設計者は事務所登録されている事務所の所属建築士なのか?

ということなのです。

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