鉄筋かぶり厚は大きければ大きいほどよいのか?

ちょっと最近ネット上で、鉄筋のコンクリートかぶり厚についての現場施工に問題があったという記事を見かけました。日経XTECHさんの記事です。

鉄筋かぶり厚というのは、鉄筋コンクリート造の構造体で、鉄筋の外側にあるコンクリートの厚みを指します。Google先生的には「コンクリート表面から内部の鉄筋表面までの最短距離(厚さ)のこと」とおっしゃってますw

鉄筋コンクリート造で鉄筋がコンクリートの中に埋まっているのは当たり前のことではありますが、そもそも論、鉄筋コンクリート造というのは、引張力に対抗することが得意な鉄筋と、圧縮力に対抗することが得意なコンクリートの双方イイとこ取りした構造で、しっかりと鉄筋とコンクリートが合体することが必要なわけです。このとき、埋まっている深さが浅いといろんな問題がおこってきます。

コンクリートは強烈なアルカリ性なのですが、このアルカリ性が担保されることで鉄筋の錆びが防ぐことができます。ですが、経年変化でこのアルカリ性がどんどん中性化していくという問題もあり、鉄筋がコンクリート表面から浅い場合には、表面部分の中性化がどんどん進むことで鉄筋の錆びの可能性も高まるのと、水分などの浸透での鉄筋劣化の危険性も高まります。また、耐火性能の面からもコンクリートのかぶりが薄ければ火災時の高温の熱の影響を鉄筋が受けることになりますので強度劣化につながります。

したがって、鉄筋コンクリート造においては、この「鉄筋かぶり厚」というのは重要な要素として法的にも基準が設けられています。(試験に出ますwwww)

◎建築基準法施行令第79条

(鉄筋のかぶり厚さ)
第七十九条 鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、耐力壁以外の壁又は床にあつては二センチメートル以上、耐力壁、柱又ははりにあつては三センチメートル以上、直接土に接する壁、柱、床若しくははり又は布基礎の立上り部分にあつては四センチメートル以上、基礎(布基礎の立上り部分を除く。)にあつては捨コンクリートの部分を除いて六センチメートル以上としなければならない。
2 前項の規定は、水、空気、酸又は塩による鉄筋の腐食を防止し、かつ、鉄筋とコンクリートとを有効に付着させることにより、同項に規定するかぶり厚さとした場合と同等以上の耐久性及び強度を有するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部材及び国土交通大臣の認定を受けた部材については、適用しない。

日経XTECHさんの記事にある指摘の箇所は、木造住宅の基礎におけるべた基礎や布基礎のフーチング部分のかぶり厚さを問題にしておりますが、法的な規定でいきますと「6cm」以上が求められます。

この規定を十分に理解している現場の施工管理者は確実に法的な6cmをクリアするように配筋工事が終わった際には検査しますし、設計監理者も配筋検査においてはかなり重視する点です。かぶりが取れないような施工を行えば、確実にやり直しが求められます。何度も言いますが、かなり神経を使うところなわけです。

そうなりますと、鉄筋工事の段階で、できるだけかぶり厚を多く取ろうとする施工を心掛けることになります。例えば規定6cmであれば7cmとか8cm、とにかく、大きければいい!という感覚で施工することになります。これを「安全側に考える」として捉える向きがありますが、実は正直、

「いらんことすんな!www」

なこともあるんですw 結構、それを理解していない施工管理者は多いのと、そういうところを意識しないで構造設計をする設計者が多いです。

ここで、鉄筋コンクリート造(以下、RC造)の構造の強さを検討するための極々初歩的な図と数式を示します。

これは、RC造における鉄筋量を検討する際の考え方の模式図です。RC梁に上から荷重が作用すると梁上端に圧縮力(C)、下端に引張力(T)が作用します。先ほども書きました通り、RC造はコンクリートの圧縮力、鉄筋の引張力に対抗する利点を利用していますので、下端に作用する引張力をもって必要な鉄筋量を算出します。これが「at」として示されている「必要鉄筋量」というものです。

この「at」の算出式で重量になってくるのは「j:応力中心距離」というものです。これはCがかかる位置からTの位置までの距離を指すのですが、これが「鉄筋かぶり厚」直結してくるわけです。jを計算するにあたっては、「dt」というものが必要になってきます。この「dt」は「下端主鉄筋の中心」からコンクリート表面までの距離を示します。RC造の強度決定は荷重に対して耐えうる耐力があることを保証するわけですが、その際に必要となる鉄筋量を算出するには、この「j」が一つの要素になるわけです。

「at」の算出式を見ますと、「j」は分母にあります。「j」が小さくなるということは分母が小さくなるわけですので、算出される「at」は「j」の大きさが小さくなれば大きな値になっていくというわけです。言い換えますと、

「j」が小さくなると「at」が大きくなる。必要な鉄筋量が増えてしまう。

ということになるわけです。ではなぜこれが「鉄筋かぶり厚」と関係してくるのでしょうか? それを図に示したものがこれです。

「鉄筋かぶり厚」というのは、主筋とかスターラップとか、種別に関係なく、一番外側にある鉄筋とコンクリート表面までの距離を言います。「dt」は主筋中心までの距離ですから「鉄筋かぶり」より内側にくるはずです。

ここで、法規定通り「鉄筋かぶり厚」を「6cm」とします。以下、単位をmmにしますw

一般的な木造住宅の鉄筋といいますと、主筋にまとわりつくようなスターラップ(せん断補強筋)がD10、主筋はD13という感じです。鉄筋は異形鉄筋といって単なる丸ではなくリブが付いているデコボコな丸なので、D10では10mmよりも、D13では13mmよりもデカくなります。でも、ここではメンドクサイのでD10を10mm、D13を13mmとします。

さて、法規制通り鉄筋かぶりを60mmとった場合、図のdtは、

60+10(D10の直径)+13/2(D13の半径)

となりますので、dt=76.5mmとなります。ここで問題になるのが、構造設計において、このdtの想定をいくつにしていたか?ということなわけです。構造設計した設計士が、現場の施工管理者がビビってかぶり厚を多めにとることを想定して、

dt=100mm

として設計しているとすると、現場の施工管理者はビビッて大きくできるのは、最小かぶり厚60mm+23.5mmまでということになります。ざっくり言えば、80mmくらいのかぶり厚精度で大丈夫ってことになります。

ところが、これを、

dt=80mm

としているとすれば、かぶり厚の余幅は3.5mmしかありませんwww こんなもん、現場で施工してたら誤差の範疇でしかありませんwww もはや施工精度を上げることも限界なくらいの精度をもって施工にあたれというわけですので、鉄筋の下に入れるベースなんかもすさまじく吟味する必要がありますwww

つまり、施工精度が上がりにくい基礎のしかも底版部分に対して、こんなシビアな数値で構造設計するほうがおかしいわけです。でも、こんなのお客さんは知りませんw

また、これは構造設計がなされている場合に言えることで、構造設計がなされていない場合には、余幅をどのくらいにするか?は設計監理者との協議になります。ですが、構造設計がなされていないということは必要鉄筋量の算出がなされた上で配筋計画がされているわけではありませんので、この「dt」の問題なんて知る由もありませんwww したがって、

60mmが下回ることがないように!

という指示しかでませんwww これが構造設計がなされていないような住宅建築では極々フツーにまかり通っているというわけです。

弊社では概ね下端の「dt」については90mmから110mmの間で構造設計を行います。現場での施工は、かぶり厚を60mm近辺まで精度をあげますので、結果として設計強度を上回る強度が期待できることになります。

鉄筋かぶり厚については、このような理由で「大きければ大きいほどよい」というわけではないのです。

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