耐震等級に対する無理解 その2

前回に続きます。

この「耐震等級に対する無理解」というブログを書こうと思ったのは、SNSやYoutube動画などに流れる情報の大半が「耐震等級1より3」ということを話題にしていて、その理由を「耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の耐震性がある」という表現をしているものばかりなのです。この「1.5倍の耐震性がある」というのは、実は「正確」ではないのです。でも、その実を語るのは少なくとも私が知る限り1つか2つくらいのサイトしかありません。

前回でお話しましたとおり、耐震等級1,2,3というのは、耐震性能に対する「余力の幅」を表しているだけだということをご紹介しました。再度、書いておきますが、あくまでも地震に対する建物の抵抗力(耐力)の「余幅」を評価しているだけということです。よって何かをベースにして、そのベースに対しての「余幅」を評価するわけですから、そのベースは何?ということを知らないといけません。

そのベースとは「建築基準法の規定レベル」であるというわけです。このレベルに対しての「余幅」が、25%増しが「耐震等級2」、50%増しが「耐震等級3」なのです。この部分の説明を「建築基準法レベルで想定している地震よりも、25%、50%の地震に耐える」という説明をしているところが大多数で、それって表現が間違ってるというのを理解していない人が専門家という人たちの中にもいるということです。何故なら、等級1も2も3も、同じ地震力の定義である「極めて稀に発生する地震による力」ということを前提にしているにすぎないからです(これが新耐震基準です)。

さて、今回のブログではもう少し踏み込み、「評価の方法」という部分に触れたいと思います。実は評価基準には2つあります。そもそも論、「地震に対する強さ」というものは何をもって評価するのか?ということの根本を知る必要があるわけですが、それは何ですか?というとちゃんと答えられない専門家は多いです。答えは以下の通りですw

 ①構造躯体の「倒壊等防止」(告示第1347号第5 1-1)
 ②構造躯体の「損傷防止」(告示第1347号第5 1-2)

の2つです。構造躯体とは、基礎、柱、梁、壁、床といった荷重を支える部分のことで、法的には「主要構造部」といわれます(あえて階段は外してありますw)。この構造躯体に対して、想定した地震「極めて稀に発生する地震」が発生し、建物に相当の力が加わった際に、躯体がバラバラになって人命が危うくなるような潰れ方をしないことと、力が加わった際に、躯体が損傷しないことを評価します。

この時加わる力が、建築基準法レベルの力に相当するもので問題がないことが「等級1」、その25%増でも問題ないのが「等級2」、その50%増でも問題がないのが「等級3」なのです。念を押すようで申し訳ないですが、どこにも地震震度のレベルを示している文言などないのです。等級1でも2でも3でも、同じ「極めて稀に発生する地震」を想定して加力した場合の、その加力を割り増すことを評価にしているだけです。

そして、具体的な評価方法としては、以下の手法が規定されています。

 1.限界耐力計算による構造計算
 2.保有水平耐力計算等による構造計算
 3.許容応力度法による構造計算
 4.階数が2以下の木造の建築物における基準適用

の4つです。この4つのどの手法をとって評価しようと構いませんw そして、ここで特筆すべきこととして、「4.階数が2以下の木造の建築物における基準適用」の存在です。この4つの手法をざっくりとわけると、「構造計算」による評価か、「基準適用」による評価か、の2択です。そして「木造」に限っては2階建て以下の場合には、この「4」という手法がわざわざ用意されているということです。

では、その「4」というものを具体的にご紹介しましょうw 以下の画像が元になるものです。

木造住宅の2階建てレベルの構造物というのは、極々小さな建物の部類になります。間取りが違っていてもだいたい建物としての形状は似たようなものになります。画一化された基準にあてはめやすく、かつ、作られる建築物の数はすごく多いので、評価するための時間や労力を合理化させたいという目論見もでてきます。これは木造住宅に限ったことではありませんが、規模が小さく、建築物が与える社会的影響が限定的であれば、ある一定の規定や基準を踏襲させることで、あるレベルの安全性を担保できるという仕組みは合理的なわけです。これが「建築基準法の仕様規定」といわれる存在です。

従って、耐震性能の評価においても同様な「仕様規定」を作り上げることで、評価の合理化を図ろうというわけで、その手法がこの「木造軸組工法住宅の横架材及び基礎のスパン表」というわけです。何がかかれているか?といいますと、ホントは中身の画像をアップしたほうがよいんでしょうけど、結構、版権的にうるさそうなので疑似的なものとしてイメージをアップします。あくまでもイメージですw

スパン表とは、ある設計条件下で構造モデルをつくり、それを構造計算した結果をまとめたものです。使い方としては、計画する建物の設計条件がスパン表の設計条件と一致するものを選び、その部材等の状況のモデルがおかれている長さや配置、その他の部材との関係を考慮した場合の計算結果の「表」から該当する数値をひっぱってくるというものです。

このスパン表を使うという手法が「4.階数が2以下の木造の建築物における基準適用」の基本になります。構造計算を行わなくても、設計条件などから用意された表中の数値で構造評価できるわけですので、すごく合理的なわけです。でも、スパン表を使う前提は、作られたスパン表の設計条件に合致してこなければなりません。また、スパン表を作る場合にも、想定できる建物はより一般的な形状の建物であることが多く、特殊な形状や形態などの場合には必ずしも合致するとは言えません。しかし制度上は、このスパン表を使うことでも評価が得られ、構造計算などしなくとも等級3などの計画が立案できるわけです。

次回は、このスパン表と構造計算の部分を掘り下げたいと思います♪


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