「イランショック」による石油製品の供給量激減で騒がれていますが、私共建築業界にもその波は押し寄せています。先般、水廻り設備品のメーカーである、TOTOやLIXILから受注停止のお知らせが発せられいよいよという感じもします。ですが、このお知らせの文面に記載がある「従来の発注」という部分をあまり意識されない人がいるのです。この「従来の発注」というものが意味するのは、大量に発注することで仕入れ上のコストメリットを出すために、「とりあえず10セット」というような発注を指します。これは問屋さんだけのことだけじゃなく、建設会社、工務店なども同じで、経済情勢を不安視することで、標準的に採用している水廻り品などを事前に発注して確保するということを行うわけです。
これを行うとどうなるか?というと、実際に今必要だ!という現場に納入されるわけではなく、資力があるところに製品が多く流れ、結果として経済的な不安要素を国全体に与える結果になるわけです。コロナ渦を経験した製造業では、当時は人の接触という部分での規制があって生産量や物流量が激減したわけで、当時も同様な「買い占め」や「見込み発注(仮発注)」などが横行しました。結果として、本来必要な数の2倍、3倍の受注を受けることになり、製造のための資材確保がままならずパニックに陥ったというわけです。コロナ渦では輸入木材が入らなくなり高騰するだけでなくモノ自体がないという状況になり、木造建築には大打撃を与えたばかりです。
こうした物流危機に対して、日ごろから「適正化」を計ることを国策として展開した結果が、以前ブログでもご紹介した「パートナーシップ構築宣言」という制度です。
繰り返しになりますが、この宣言は、
取引関係のフェア化、サプライチェーン全体での付加価値向上と適切な価格転嫁を通じた「賃上げ」が可能な経済環境を作ること、そして、単なるコスト削減ではなく、規模や系列を超えた新たな連携(オープンイノベーション等)により、サプライチェーン全体の競争力を高めることを目的として意識付けされた施策
なのです。弊社及び弊社子会社のFKTlab有限会社もこの宣言を行っています。


サプライチェーンをしっかりと意識し、その上流から下流までを合理的かつ安定的に考えるための基本的なイメージは、このサプライチェーンというものの全体像を理解しなければなりません。イメージはこれなんですが、すべての経済活動には企業の大小、売り上げの大小に関わらずこの流れがあるわけです。また、一般家庭における「生活」でも同じです。

このイメージを意識し、その時々で問題があれば真摯に対応していくという企業理念が必要なわけですが、これが「パートナーシップ構築宣言」として制度化されているというわけです。

この宣言のイメージが、危機的状況に陥ったときに冷静な判断ができる企業体質を作り上げるわけですが、実は、TOTOさんやLIXILさんもこの「パートナーシップ構築宣言」をなされているお会社なわけです。
以下、LIXILさんの「パートナーシップ構築宣言」です。


TOTOさんの「パートナーシップ構築宣言」は以下の通りです。

この宣言の根本部分は共通していることがあるのですが、特に重要なのは「1」なのです。
1. サプライチェーン 全体の共存共栄と規模・系列等 を 超えた 新たな 連携直接の取引先だけでなくサプライチェーンの深い層の 取引先に働きかけることにより、サプライチェーン全体での付加価値向上に取り組むとともに、 既存の取引関係や企業規模 等 を超えた連携によ り、取引先との共存共栄の構築を目指します。
今回のLIXILさんやTOTOさんのお知らせも「深い層の取引先に働きかける」ことにあります。
ちなみに「パートナーシップ構築宣言」を行っている企業は以下のサイトから検索でき、宣言内容を確認することができます。
さて、これは大きな流れの中での考え方ですが、サプライチェーンを意識することは、建築工事が究極の「アセンブリ作業」なわけですので、日ごろから様々なサプライチェーンに対して情報収集と検討が必要なわけです。従って、弊社では使用する材料や製品に対しての「標準化」は行っていません。お客様のご要望が特になければ、通常使用している建材や設備品などを設計に入れた上でご意向を伺って、否となれば変更という形態をとっております。フレキシブルに対応することが可能なわけですが、サプライチェーンに問題が発生すれば、納期や価格といったことを併せてご提案することになります。
また、構造材の部分でも同じです。木材やコンクリート、鉄筋、鉄骨材、アルミといった部材、資材に関しては特に木材や鉄については相場の変動が激しいわけで価格変動は常です。従って例えば基礎強度がある一定の要求がある場合、鉄が高騰している状況であればRC設計の場合にはコンクリート側で強度を出す、逆であれば、鉄筋とコンクリートの利用量のバランスを考えることになります。
木材も同じで、外材の輸入量が減れば価格は高騰しますので、であれば国産材を使うという選択肢をとりますし、その際、比較的安価に手に入る「杉材」であれば、強度不足を補うための構造設計をしっかりと行っていくという手段をとるわけです。
コストダウンというのは、単に、モノの単価を考えるだけではダメなのです。サプライチェーン全体を見渡したコストメリットを考えないとダメで、これを設計段階で行っていかなければ、お客様への提供価格は単純に高騰していくばかりなのです。
「設計に金額や調達を考える」
お客様から言わせれば当たり前のことですが、それができない業者が多いのが、設計界隈の実態なのです。



