冬の爪痕

ちょっと気分転換に出かけたんですが、その先でこんな風景を見かけました。

軒先がへし折れています。この建物があるところは、一昨年の雪でもご近所の家の屋根が折れていたところです。以前のブログでもご紹介しましたが、この「軒先の損傷」というのは物理的にいっても危険性が高い部位です。

屋根の構造を見ると以下のような形でモデル化できます。

単純梁 母屋間の屋根垂木
片持ち梁 軒先

この状況で同じだけ雪がのっかった場合、どのくらいこの屋根垂木が変形するか?というのは以下の式で表すことができます。δは「たわみ量」といわれるものです。

単純梁、母屋間の屋根垂木のたわみ量は以下の式です。

片持ち梁、軒先の屋根垂木のたわみ量は以下の式です。

比較しますと、母屋間のたわみ量の係数は5/384、軒先のたわみ量は1/8です。概ね軒先のたわみ量は、母屋間のたわみ量の10倍程度になります。ここで、Lが違いますので、例えば、母屋間のLを910とし、軒先を455とし、概ね半分の長さとみても、その差は「5倍」くらいになります。

また、これは「w」が同じだという前提での話しですので、雪融けが進み屋根の雪が軒先方向にずり落ちてきますと、軒先での「w」は、母屋間での「w」よりも大きくなります。

こうなれば、軒先からへし折れるのは「時間の問題」ということになります。木材はクリープ変形という「長期間一定の荷重が作用したとき、たわみが徐々に増加する現象」を起こすので、例えば1年目の雪に耐えたとしても、その期間が相当期間であれば、その時点で変形が進み、また翌年にはさらに進み、その積み重ねでやがて限界まで変形し、最後は折れるということになります。

今、屋根の軒先が問題ないとしても、クリープ変形が進行しているような場合には来年ドカ雪がくれば破損する可能性が高いということになります。実際にこれを考慮するには、軒先部材の構造計算をしっかりする必要がありますが、この場合、屋根瓦や木材自重なども雪の荷重と同様に加えて考えますので、計算すると、垂木間が303くらいでは瓦を載せたら300~400程度しか軒を出すことはできません。どうしてもというのであれば、303の垂木間を150mmくらいに狭める必要があるのですが、この手の修繕現場を見ていると垂木間自体は「もとのまま」ということが多いです。

また、昔はこんな軒先が折れるなんてことはなかったというお話を聞きますが、昔の家は断熱性能に乏しいため、皮肉なことに屋根の雪の融けるスピードが早いのと、家族総出で雪下ろし作業をすることが一般的であったため、それほど問題がなかったというのが私見です。

いずれにしても、今年乗り切ったから来年も大丈夫、というのは構造状況によっては言い切れない部分もあるということは頭の片隅においてほしいところです。

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