一級建築士資格試験改正への建築学会の意見書

日経クロステックさんのニュース記事で、「一級建築士資格試験改正」について建築学会が意見書を提出した件が取り上げられていました。

これは一級建築士の学科試験の受験資格を指定する大学学科に在学中の学生に対して、在学中でも学科試験受験を認めるということを改正案として検討中であることに対する「意見書」です。

現状では、2018年に建築士試験制度が法的に改正され、一級建築士に対しての受験資格について指定学科であれば実務経験なしで「学科試験」の受験資格を認め合格後2年の実務経験を経て1級建築士登録ができるというものです。それ以前は、指定学科を卒業しても2年の実務経験がなければ学科の受験資格が与えられることがありませんでしたので、学科試験の受験資格が前倒しになることで受験機会が増える、それが1級建築士不足解消につながるという目論見からでした。

今回の改正案では、その学科試験の受験資格を指定学科の学生であれば在学中に受験機会を与えることになり、受験者数が増えることで低い合格率でも実務経験2年を積みさえすれば1級建築士になれるという機会の創出という意味合いで歓迎されている感じでした。ですが、「日本建築学会」では、建築教育委員会に「次世代の建築教育WG(長澤夏子委員長)」を設置して議論を開始することを宣言したのですが、この宣言の中で、

 「建築学会が建築士法改正に「注文」、大学卒業前の1級建築士受験に懸念」

と日経クロステックさんが記事を出しておりました。そこで、建築学会のホームページをみたところ、今回の改正案に対して「意見書」が公開されていました。

この意見書はPDFで公開されています。

そして、これに続き、

建築設計三会の「建築士および建築士事務所に係る法制等の改善に関する提案」および対応動向に対する日本建築学会 建築教育委員会からの意見

として公開されています。

この中で試験制度の改正について意見を述べている箇所が以下のところです。

一口に指定学科の学生といっても、その指定学科自体がすべての建築士学科試験の受験科目や問題内容に合致しているわけではありません。そのもっとも顕著な例といえば、「構造」や「施工」といった部分の履修科目にレベルの差があり、指定学科にさえ入学していれば実際の問題に解答できるレベルの知識を得られるか?といえばそうではありません。

また就職時の学生のキャリアホルダーに対して、例えば学科試験合格者とそうでない人の間に「差」が生まれることも懸念されます。たかが「学科試験の合格」というレベルが如何にも建築知識の面でアドバンテージがあるような印象を資格試験が与えるというのは、建築業界の若手人材確保という側面から見てもマイナスにしかなりません。

1級建築士の人材確保を旨とするならば、旧態依然とした1年に1回の受験機会しかないということを改革すべきであって、受験できる年齢を下げることではないと私も思います。また、本来「建築士」というのは、一般の方から見れば「建築に関するエキスパート」であるという認識があります。ところが実態としては、「資格試験に合格した」というだけで、実務レベルでその専門性を能力として発揮しているという人は少ないのです。

2025年4月からは法改正により、4号特例という一般的な住宅レベルで緩和されていた「法適合審査」をなくしました。これにより業界全体が大騒ぎになり、かつ、国交省が数年かけて各地でセミナーなどを開催して建築士に対する能力向上のテコ入れをしたばかりです。この原因は、資格試験制度そのものにあり、資格取得のための学習時間が十分にとれない「実務経験豊富な現実務者」にとって、苦行ともいえる試験制度にしかなっていないことが原因です。

1級建築士を増やしたいという施策を考えるなら、その資格試験にチャレンジする機会を年に数回つくれば、平生は現場や設計実務に忙しい実務者にも門戸が広がることになり、いわゆる「ペーパー建築士」が減ることで設計や施工監理の側面からも品質が上がると考えています。

国には是非、このような試験制度が抱える現状の問題をしっかり判断していただき、単に受験機会を早めればよいなどという短絡的な考え方はとらないでいただきたいと強く思います。

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