設計の物差し その3(終)

その2に続きます。

もう少し別の視点をご紹介しようと思います。車をお持ちの方であれば「車検」というものを受けると思います。この「車検」ですが、正式には「自動車検査登録制度」といいます。

この「車検」ですが、ざっくり言えば、

 「自動車が保安基準に適合し、安全に走行できる状態かどうかを検査」

というものですが、この「保安基準」というものが「道路運送車両法」という法律でガチガチに定められていますw 改造車などが違反だということで摘発を受けたりするのは、この法律に違反しているということで取り締まられるというわけです。もう一方で自動車には「法定点検」というものがあります。1年のものもありますし、2年のものもあります。2年のものは「車検」と連動させて点検を行うというものです。まとめるとこんな感じです。

車検制度では国が定めた「保安基準」を満たしているかどうかを検査し、満たしていない場合には車検が通りません。車検が通らない自動車は「未車検車」となり、乗ることができません。摘発を受ければ捕まりますw その一方で「法定点検」は点検内容が法的に定められているのですが、点検を受けていないからといって自動車を動かすことができないとまではいきません。自動車の「性能」としての56の項目に対して点検し、問題があれば修理等の改善が促されるものです。

この「車検」と「法定点検」との関係が、今回問題にしている「仕様規定」と「構造計算」の関係に似ているのです。ちょっと図にまとめてみました。


建築での「仕様規定」は「車検」です。適合できていなければアウトですw ですが「構造計算」はどうか?というと「法定点検」と同じ立ち位置で、性能などを詳しく検証することが目的となります。

どうしてこのような法律の立て付けがあるか?といえば、法が縛ることというのは必要最小限であるべきだからです。例えば車で言えば走行中にタイヤが外れるとか、ブレーキが効かなくなるなどは命に関わります。なのでそこを「車検」という制度で縛るわけです。建築も同じで、命にかかること、つまり建物が倒壊する危険性がはらむことを回避するために一定の規制を行うというわけです。

でも、実際に自動車に乗るときは、単に動きさえすればいいというわけではありません。細かな機能の一つ一つが十分に動作してくれることで快適な運転ができるわけですが、それを「法定点検」として位置づけ、機能として働くかどうかの点検を行うことを別枠で用意しているわけです。

建築も同じです。仕様規定で定めがない、例えば、梁の断面強度などについてを構造計算で評価すると、荷重が載った際のたわみ量などが計算されます。重量物が載ったときに床の変形があるか?という評価ができます。また、福井などの多雪地域の場合には、雪の重みで屋根が変形するとか、雪が載った状態で地震が来たらどうなるか?ということまでを評価することで、より安全性を見ることができるわけです。

自動車の「法定点検」を受けない人がいるのと同じで、建築において「構造計算」をしない人がいるわけです。ところが、自動車の「法定点検」と建築の「構造計算」が同じでないところが一つあります。それは、

 「構造計算の結果」をもって「安全性の評価」とすることができる。

というものです。「法定点検」を受けて車検を受けないことはできません。でも、建築の場合には「法定点検」と同じ立ち位置の「構造計算」を行うことで「車検」と同じ効果をもたらすことができるわけです。これには理由があって、そもそも建築基準法での定めというのは「安全性の評価」であって、その手法を一つの手法に限定しているわけではないからなのです。

そして、もう一つの問題が「お客様の希望」を叶える業界構造です。

「車検」のタイミングで「法定点検」を受けたいという自動車のオーナーさんは、「整備付き車検」などより安全性を重視した車両整備を行います。ですが、建物の場合、例えば住宅を例にあげたときに、より安全性を重視したいとお客様が希望したとしても、「構造計算」という評価を行うことができる業者はかなり少ないという実態があります。できないことを「できません」というのであればまだしも、「必要ありません」などの理由で否定する業者も多いわけです。

お客様が構造計算という評価を望んだとしても、それを行えないという実態が建築の設計界隈にあることを知ってほしいのです。そんな設計者に建物の設計を任すのですか?

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