ちょっと前に「日経クロステック」さんの記事に「仕様規定と構造計算は「別の物差し」」という記事が出ていました。
詳しくはWEB記事を読んでいただければと思いますが、要約すれば、
引き渡しを受けた住宅の「構造」について、構造計算をせずに仕様規定で法適合させている物件に対して、建築主が独自に別の建築士に構造計算を依頼し計算したところ計算結果がNGとなったことを受け、設計を請け負った建築士を訴えたが、判決で仕様規定に適合できていれば構造計算でNGとなっても問題はない。
というものです。
ここで「仕様規定」について説明します。「仕様規定」とは建築基準法及び基準法施行令、省令で定められた「仕様」を指します。「構造」に関しては具体的に以下のような形で「建築基準法施行令」にまとまっています。
第三章 構造強度
第一節 総則(第三十六条―第三十六条の四)
第二節 構造部材等(第三十七条―第三十九条)
第三節 木造(第四十条―第五十条)
第四節 組積造(第五十一条―第六十二条)
第四節の二 補強コンクリートブロツク造(第六十二条の二―第六十二条の八)
第五節 鉄骨造(第六十三条―第七十条)
第六節 鉄筋コンクリート造(第七十一条―第七十九条)
第六節の二 鉄骨鉄筋コンクリート造(第七十九条の二―第七十九条の四)
第七節 無筋コンクリート造(第八十条)
第七節の二 構造方法に関する補則(第八十条の二・第八十条の三)
第八節 構造計算
第一款 総則(第八十一条)
第一款の二 保有水平耐力計算(第八十二条―第八十二条の四)
第一款の三 限界耐力計算(第八十二条の五)
第一款の四 許容応力度等計算(第八十二条の六)
第二款 荷重及び外力(第八十三条―第八十八条)
第三款 許容応力度(第八十九条―第九十四条)
第四款 材料強度(第九十五条―第百六条)
日経クロステックさんの記事は、木造2階建住宅についての事案でしたが、仕様規定に書かれているのは木造に限ったことではありません。鉄骨やRC造などの構造形式や、その他の形式についても細かく規定されています。また、これは「構造」の部分のことですが、そのほかにも「防火防災」や「衛生・環境」などについても同じような細かな規定が存在しています。
今回の記事では「構造」についての事案でしたので、例えば、木造のところであれば、有名どころとしては「第46条」があります。
(構造耐力上必要な軸組等)
第四十六条 構造耐力上主要な部分である壁、柱及び横架材を木造とした建築物にあつては、全ての方向の水平力に対して安全であるように、各階の張り間方向及び桁行方向に、それぞれ壁を設け又は筋かいを入れた軸組を釣合い良く配置しなければならない。
施行令にはここまでしか書かれておりませんが、これを具体的に示しているのは、
令和6年 国土交通省告示第447号
木造の建築物の軸組の構造方法及び設置の基準を定める件
という告示です。ご興味がおありの方は以下の国交省HPをご参照くださいw
このほかの有名どころとしては、
平成12年 建設省告示第1460号
木造の継手及び仕口の構造方法を定める件
というものもございます。これは柱や筋交いの配置によって設置を義務付ける「金物」の規定です。

https://www.kaneshin.co.jp/support/kanamono/rule.php
さて、いずれにせよ、日本国の建築基準法での「構造」の仕様規定では、それはそれは細かな規定を法律として定められているのですが、これらの規定は実験や膨大な計算事例をまとめ上げた結果として、想定している「極めて稀な地震(数百年に一回起こるかもしれない最大級の地震)」で建物が倒壊しないということを目標にしていることが建築基準法の耐震性の原点です。そしてこの原点は日本国における建築物の耐震性能として「最低限」のレベルであるということです。
つまり、構造の「仕様規定」とは、ざっくばらんに言えば、
とりま、こうやって作っとけば、「いつもの地震」くらいなら問題ねぇよ?
っていうわけです。でも、実は法律は「この通りに絶対作れ!」といっているところもあれば、そうでないところもあるわけです。それが各条文の最後のところにかかれるこの一文です。
国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。
書いてない条文もあります。書いてない条文については「絶対やれ!」とか「絶対こうやって作れ!」っていう話しですw でも、すべてをガチガチにしてしまうと、運用上の問題や意匠上の問題などでどうしても対応できないことが出てきてしまうわけで、それを回避するための一文であったり、より性能の高いものを求めるために工学的な評価を行うための道筋を残しているというわけです。実はちょっとレベルは低いかもですが、先ほどの金物の件も、「N値計算」を使えば第1460号の規定に従わないとすることができます。結果として金物の使用量などが変わるので施工上有利になったりします。なので「N値計算」を当たり前にするというわけですw
今回は「仕様規定」の説明でしたが、次回は今回の事案の「構造計算」についてお話しします。



